光の風 〈国王篇〉後編-7
「カルサの命を狙う者が脅威的な力の持ち主ならば、一人でどれくらい立ち向かえるのか。それが知りたい。」
ハワードの言葉に貴未は口が重たくなるのを感じた。それはハワードにも伝わった。
「特殊能力を持つ私達から見てもカルサの力は強く、計り知れない物を感じます。」
貴未は一呼吸置いた。
「それでも、おそらく適わないでしょう。」
ハワードはゆっくりと目を閉じる。カルサが国を出ると言いだした時から嫌な予感はしていた。何故出ていかねばならないのか、カルサは国王となってから極力国から出ようとしなかったはず。国を守るという事に強い責任感を持っていた。
これまで幾度となくカルサの命を狙ってきた者はいた。それを迎え討ち、全て抑えてきたのだ。このシードゥルサで、この国から出る事もなく背負って戦い、勝ってきた。
そんな人が軽々しく国を出るなどと言う訳が無い。特にこんな状況なら尚更有り得ない事だった。
「そうか。」
やはり、その言葉は言えなかった。悔しい気持ちが口元に表れる。
「ですが、仲間がいます。私を含め、同じ特殊な力を、強い力を持つ仲間が何人かいます!」
貴未の強い語りかけにハワードは鬱ぎきってしまった気持ちを開けた。
「私達が必ずカルサを守ります。力を合わせれば何とかなる筈です!」
そう信じたい、そんな思いが表情に出ていた。手に力が入る、気持ちを奮い立たせないと負けてしまいそうだ。
「本当に何とかなるのか?私は気休めなど聞きたくない。」
震える貴未の拳を見てハワードは冷静さを取り戻した。その様子では明らかに希望などないように見える。有りもしない光にすがるような思いなど、そんな希望にすがって生きるほど若くはない。
ハワードの厳しくも切ない目が貴未を揺さ振る。
「カルサが負ければ私達の未来は有りません。殺戮か、支配か、この国はもう彼に知られているから。」
もう何と反応すればいいのか分からず、ハワードは静かに頷き言葉の続きを促した。
「でも、カルサが…私達が負ける事はないんです。」
明らかに言い回しがおかしかった。
「どういう事だ?」
ハワードは疑問符をそのまま口にした。
「倒すか、刺し違えるか。どちらかなんです。カルサの命があるかないか。」
「それは、つまり…。」
「彼を倒す方法は1つだけなんですよ。」
貴未の声が震えた。
「カルサの命が、あいつの弱点なんです。」
あまりの話の内容にハワードは手で頭を支えた。いくら頭のキレがいいと評判のハワードでもまったく意味が分からなかった。
パズルのピースが足りない。