光の風 〈国王篇〉後編-2
「理由をお聞かせ願えますか。」
ゆっくりと、威圧するように大臣は尋ねた。
「理由はない。以後このような事が無いよう、十分に気を付ける。」
カルサは堂々とした態度で答え、退室を伺わせるような雰囲気を出す。普通なら何も言わず、あとはカルサの流れに合わせるところだが、今日の大臣はそういう訳にはいかなかった。
「陛下、無礼を承知で申し上げます。」
大臣はその一言でカルサの動きを止めた。
「言えない理由というのは、ナル様の死と何か関係があるのですか?」
部屋の中の雰囲気が一気に緊迫し、体が緊張していくのが分かった。
「理由はない。そう言ったはずだが?」
いつものように冷静に堂々とした態度で対応する。国王としての威厳がそこにはあった。
「理由はないのではなくて、言えないのでは?」
しかし大臣も引き下がらない。睨み合ったまま互いに様子を伺っているようだ。
「何が言いたい?」
「サルスパペルト様が陛下の代わりをするようになってから、或いはそれ以前から確執があるように見えます。」
大臣は一度口を止め、カルサの反応が無いことを確認すると話を続けた。
「陛下は壁を高くし、サルスパペルト様もまた壁を作った。本来なら分かりあい支え合わなければならない二人が、今ではバラバラです。」
「それで?」
「何故サルスパペルト様が会議を開くのか理解されてますか?そして、本当に今後このような事が無いと約束出来るのですか?」
ゆっくりと瞬きをするとカルサは再び大臣と向きあった。
「サルスとの話し合いは幾度となく行っている。会議についても確認をしに行く、対策は十分に行う。」
それが答えだと、強い口調で、態度で示した。貴未は一歩引いた位置で静かに二人を見守っていた。
「十分にサルスパペルト様を理解されていると。」
苦々しい表情で大臣は問いかけた。カルサは眉間の皺を深める事で反応した。大臣は高ぶる感情を堪えるようにきつく目を閉じる。
「ならば何故、サルスパペルト様が一人で泣かねばならないのか!」
囁くような叫びは、どんな大声よりも耳の奥まで響いた。
「サルスが泣く?」
自然と口からこぼれ落ちた言葉は今のカルサの一番素直な反応だった。緊張していた表情から一変、拍子抜けな、素の表情が出ていた。
「陛下、理由は分かりませんが貴方は近い内にこの国を出ていかれるおつもりでしょう。しかしそれはこの国にとって何一つ益はありません。」
大臣の険しい表情はいつにも増したものだった。その雰囲気に一瞬にして気持ちを引き締めさせられる。