winter time-1
今日もあのバス停で、あの空間を待つ。
冷たくなった指先をさすりながら。
寒い冬だからこそ、より一層温かく感じられる。
………キミとの時間。
枯れ葉が風に吹かれて地面を滑っていく…。
私の髪もマフラーの下で揺れている。
気温が低いだけでなく、風も冷たいとなれば、体の芯まで凍りそうだ。
雪が積もるような地域でないことが、せめてもの救いだろうか。
「…あ〜、寒っ」
しかし、どうしてバス停には電車のホームのように待合室がないのだろう…。
今にも雪が降りそうな低い空の下に屋根とベンチだけって、どうなんだ。
その上バスは時間より遅れて来ることが多々ある。
こんな真冬に素足でミニスカートを貫き通してる女子高生の身にもなってほしい。
「今日も寒そうやな」
その声が聞こえてきた瞬間、寒さを忘れる。
当たり前のように現れたペコは、当たり前のように同じベンチに座る。
ちょっと距離を空けて。
「寒いならスカート長くしたらいいやん」
「嫌っ」
「なんで?」
「女子高生の意地!」
震えながら言う私に、ペコはふっと小さく笑う。
本名とあだ名に何の関係もないが、一年の頃から何故かペコはペコだ。
三年間それで呼び続けると、本名を忘れてしまいそうになる。
だけど私は"ペコ"という気の抜けるようなあだ名が好きだ。