winter time-2
「しゃーないなぁ…バス来たら返してや」
そう言ってペコはいつものように自分のマフラーを広げて、私の膝にかけてくれる。
こうやってくれるのを分かってるから…短いスカートなの。
ごめんね、わざとで。
ペコは肩を縮めながら、学ランのポケットに手を入れている。
男の制服はいいなぁと、冬になるとつくづく思う。
「ペコ」
「ん?」
「知ってた?明日から冬休みやで」
「…ぷははっ、知ってる。今日終業式やったやん。知ってた?」
「うん、ペコ爆睡してたけどね」
「バレてた」
「バレバレ。首カクカクなってたやん」
「あれ頷いてたんやで」
「うん、その嘘バレバレ」
このバス停で、私たちはいつもこんな緩い会話をする。
緩くて…とても穏やかな空間。
少し距離が空いた先にペコがいるだけで、凍りそうになっていた心がほっこりするのだ。
私の頬が赤いのはきっと寒いだけではない。
どうやら今日もバスは遅れているらしい。
「ペコはクリスマスどうするん?」
「ん〜バイトかな。レナは?」
「女友達と集まるかな」
「あぁ〜おつかれ〜」
「ペコもおつかれ〜」
「どういたしまして〜」
「ぷっ、わけわからん」
こうやってペコとバスを待つ冬は今年が最後。
来年は二人ともこのバス停を使わないだろう。
地面を転がっていく枯れ葉が妙に寂しく見える。
いつもは早く来いと苛立つバスに、もっと遅れて来てもいいとさえ思ってしまう。