未少年 6-1
「……潔人…」
私と同じ位の歳の女性が、驚いた表情で立っている…。
恐らくは以前からきよみょとは知り合いだったのだろう。
そのストレートの黒髪と同様の真っ直ぐな、凛とした雰囲気。
特別に目立つような服装ではないが、何か目を引くオーラがある。
その顔立ちは、白く、美しいようだ。
が、長い前髪は顔の半分近くに掛かり、その美しさを邪魔をしている。
いや寧ろ隠しているかのようだ。
“その人”は目に涙を溜め、最初から私などいなかったかのように、きよみょだけを見詰め、続けた。
「潔人……あなた…どこにいたの?ずっと探してたんだから…」
「……きみはだれ?」
「まだ思い出せないの…?己華(きはな)だよ…」
「…きはな…」
「いきなり病院からいなくなって……ほんとにびっくりして…先生も私も……どれだけあなたのこと探したか…」
「…びょういん…」
「ね、潔人、病院に戻りましょう?あなたはまだ病院を出て良い状態じゃないんだから…」
私は、ただそのやり取りを見ているだけ。
まさに第三者の立ち位置。
どうしてだろう…二人のやり取りには入っていけない気がする…。
しかしまたどうしてだろう…彼女の話し方や仕草は…どこか演技掛かっているというか…そんな気配がして妙な疑いの念も生まれた。
「……や」
「え?」
「…いやだ。びょういんにはもどらない」
「…ちょっと…潔人…何言ってるのよ…」
「それに、ぼくはきみがきらい。きみはいやなやつ」
「そ…そんなこと言ってないで…ね?潔人、戻ろ?先生もほんとに必死に潔人のこと…」
「…や!いやなの!」
きよみょの張り上げた声で我に戻った…。
きよみょがこんなに大きな声出したのなんて初めてだし、凄い剣幕…。
周りのお客さん達もざわついていて、こっちを見てる…。
己華という女性もいきなりのきよみょの怒号に驚いたのかなんなのか、少し顔を赤らめ焦っている。