未少年 6-2
「…ちょ、ちょっと、あの…きよみょ、落ち着いて?あの…己華さんも…ね?」
「や!ぼくはあんといっしょだから!」
「ちょっと…きよみょ、静かにして…」
きよみょは私の手を強く握っている。
少し痛い位の、握力。
まるで母親にしがみつく男の子のよう…。
その様を、複雑な表情で見ている彼女…。
「な…なによ急に大きな声出して…。周りにも迷惑じゃない…。それに…この女誰よ…」
「…このひとはあん。ぼくのたいせつなひと」
「大切な人ってなによ…。全部忘れてるくせに…」
「…たぶんぼくのおもいでがないのはきみのせいだ。なんとなくわかる」
「……な…何か思い出したっていうの…?」
さっきとは明らかに違う。
焦りの色。
…この人…何かある…隠してることが…。
「よくわからないけど、ぼくはたぶんきみといっしょにいちゃだめ。よくわからないけど……」
「何言ってるのよ…とにかく病院に…」
「ちょっと待ってください。……あの…私はきよみょと同居してる木水暖夢と申します」
「…潔人と…同居?」
「はい。あの……きよみょは私が責任持って病院に行かせますので…今日はお引き取り願えないでしょうか…」
「…はっ?あんた何言ってんのよ…。責任持って病院行かせるなんて…そのままどこかに逃げる可能性だってあるじゃない…」
「…逃げる?」
「…あ、いや…。とにかくそう言っといて病院に来ない可能性だってあるじゃない…」
「…それはありません。約束します」
「…誰がそんなこと信じると思ってんのよ…。さぁ、潔人、行きましょう」
「…や。ぜったいにいかない」
「潔人…そんな我が儘言わないで…ね?」
「…きみ、しつこい。おまわりさんよぶよ」
「なっ…警察!?」
“お巡りさん”という単語を聞いた瞬間、彼女の顔は、更に一際白くなった。
気がした。