SEXの条件・学級委員長 川崎静奈 追章-1
生まれて初めて授業をサボった。
屋上の手すりからシンと静まりかえった中庭を見下ろすと、見慣れたはずの景色がひどくよそよそしく見えた。
『世界中の全部が敵になってしまったみたいだ――――』
むしゃくしゃするから、中庭に向かって「ヤマトのバカ!」と思いっきり叫んでやろうか―――。
大きく息を吸い込んで手摺りから身を乗り出したその時―――
いきなり後ろから腕をつかまれた。
「…っ?!」
飛び上がりそうなくらい驚いて振り返ると、目の前に同じクラスの柳沢亮が、ぬうっと立っていた。
長い前髪をバサバサと風になびかせながら、無表情で私の二の腕をぎゅっとつかんでいる。
「は…っ?あんたこんなとこで何してんの?!」
屋上から叫ぶつもりで息を吸い込んでいたせいで、やたらとデカイ声が出た。
「じゅ……授業は?!」
「つか……お前に言われたくねーんだけど」
……た…確かに……。
冷静なヤナのツッコミに返す言葉がない。
……だけどっ……常習のヤナと違って私は初犯だし、それに私の場合は「授業がかったりーから」とかそういう不真面目な理由じゃなくて、深い訳があって仕方なく授業を休んだんであって………。
だから、サボリはサボリでもヤナと私では断じて意味が違う!………と思う。
サボった理由をどう弁解しようか必死で考えていると、ヤナは淡々とした無表情のまま、意外なことを言った。
「―――で?……死ぬの?」
「―――へ?」
なんの脈絡もなく、コイツはいきなり何を言い出すのか。