SEXの条件・学級委員長 川崎静奈 追章-5
「お前らって、お互い文句ばっか言ってるけど、実は結構仲いい父ちゃんと母ちゃんって感じなんだよな」
父ちゃんと母ちゃん―――か。
ヤマトの彼女になったらどんな感じなのか――って考えたことは何度もある。
どんなデートをして、
どんなキスをして、
どんなセックスをするのか―――。
そしてその度に、なんとなくちぐはぐな気がして、自分とヤマトは似合わないとあきらめていた。
ヤマトは私を女と思ってないし、私もヤマトにうまく甘えられない。
こんな二人がうまくいくわけがないと決めつけてしまっていた。
だけど、ヤマトと私が互いを異性だと意識しているかどうかなんて、実はどうでもいいことなのかもしれない―――。
初めてそう思えた。
だって私はヤマトが大好きで、その気持ちは誰にも負けないという自信があるのだから。
「別に―――無理してあきらめなくていいんじゃない?」
ヤナがサラリと言ったひとことに、涙がつうっとこぼれ落ちた。
「―――なんか雨降りそうだし、俺、場所変えるわ」
ヤナが唐突に踵を返した。
泣き顔を見ないように気を使ってくれたんだな―――と、素直に思えた。
アイツ、意外とイイヤツなんだな……。
ひょっとして……私が本当に死ぬかもしれないと思ったから、ヤナはわざわざ授業をサボって見に来てくれたのかもしれない。
ハンカチで頬をぬぐったら、不思議なくらい気持ちが晴れ晴れとしていた。
次の授業はちゃんと出よう。
私は「しっかり者の静奈」なんだから。
END