SEXの条件・学級委員長 川崎静奈 追章-4
「だってさ―――俺、10年くらい後に川崎とヤマトが一緒にいるとこ、なんか想像できんだよね」
「……は?……どういう意味?」
一瞬からかわれているのかと思ったけれど、ヤナは茶化そうとするわけでもなく、まるで自分自身の夢を語るように穏やかに話し始めた。
「子供が二人ぐらいいてさ……家族で公園で遊んでるとことかな」
「――こ、子供?」
それはつまり私とヤマトが結婚するという前提の妄想らしい。
付き合うことも出来てないのに子供って―――どういう発想だよ。
「みんなで弁当食ったり、子供とボール投げとかして遊んだりさ……なんか『幸せ家族』って感じになりそうじゃん」
「幸せ……家族―――」
ぶっとんだ妄想を馬鹿馬鹿しいと思いながらも、私も知らず知らずのうちにヤナの想像の世界に引き込まれていく。
頭の中のスクリーンに、子供を肩車して木漏れ日の中を散歩するヤマトの姿が浮かんだ。
私はもう一人の子供と手を繋いで、その大きな背中の後ろを歩いている。
バスケットの中には4人分のお弁当。
子供たちとアニメの主題歌を歌ったり、しりとりをしたりしながら私たちはのんびりと歩いていく。
色っぽい愛のささやきも、セクシーな雰囲気もないけれど、その光景は幸せに満ち溢れていた。