SEXの条件・学級委員長 川崎静奈 最終話-1
委員会が終わると、外はすっかり日が落ちていた。
『早く帰らなきゃ……』
ひと気のない薄暗い教室で、机の中の教科書を慌てて鞄に詰め込む。
ヤマトが戻って来る前に教室を出てしまいたかった。
あの日以来、ヤマトの顔をまともに見ることが出来ない。
「終わったらお互い何もなかったように全て忘れよう」
それがあの日の「SEXの条件」だったはずなのに―――。
肌に生々しく染み付いた官能的な記憶が、とけない呪縛のように私を苦しめる。
ヤマトの唇。
ヤマトの首筋。
ヤマトの胸板。
ヤマトの腹筋………。
そして―――黒い茂みに力強く立ち上がった、太くたくましいヤマト自身―――。
あの神々しいような美しい肉体に直接触れてしまった私のカラダは、あれ以来、彼だけを求めてはしたないほど疼いているのだ。
思いを遂げて成仏するはずだった私の恋心は、行き場を完全に失って逆に膨らんでしまったように思う。
仕掛けたのも、条件を出したのも私―――。
それなのに、むしろ私よりヤマトのほうが、以前と同じようにふるまおうと努力してくれているのがわかる。
――私…何やってんだろ――。
自己嫌悪に陥りながら足早に教室を出ようとした時、廊下のほうから入って来た大きな胸板に行く手を阻まれた。
「……ヤ…ヤマト……」
こそこそと逃げるところを見つかってしまったみたいで、ひどくバツが悪い。
「あほ。何ソッコー帰ろうとしてんねん」
呆れたツッコミ口調は以前と同じ。でも今の私たちはもう前のように軽口をたたき合えるような雰囲気ではない。