SEXの条件・学級委員長 川崎静奈 最終話-3
二人とも無言のまま、校舎を出て正門にさしかかった時、門柱の陰からぬうっと人影が現れた。
「久しぶり――シ・ズ・ナちゃん」
馴れ馴れしく私の名を呼ぶその男が、あの金髪ライオンだとわかるまでにちょっと時間がかかった。
「ずいぶん遅かったじゃん。家まで送ってあげるよ」
車のキーをジャラジャラいわせながら、男が近づいてくる。
あの時、深く考えずに聞かれるまま本名と学校を言ってしまったのだが、まさかこんなところまで付きまとわれるとは思ってもみなかった。
「―――誰や?知り合い?」
さりげなく私を庇(かば)うように男との間に入りながら、ヤマトが聞いてきた。
「う……うん」
私は苦笑いしながら曖昧にうなづくしかない。
金髪男のほうもヤマトを値踏みするようにジロジロと見ている。
「つーかこの兄ちゃんこそ何?……シズナちゃんの彼氏?」
「ううん…ち……違うの!この人はただのクラスメイト!」
ヤマトに何か変なことを言われるのではないかと心配になり、私は慌てて首を横に振った。
「ふーん。じゃあシズナちゃんが俺と帰っても別に問題ないよな?――なぁ?兄ちゃん」
金髪が顎を突き出してヤマトを威圧的に睨み付ける。
ヤマトは私の顔は全く見ずに、男と睨み合ったまま、静かな怒気を含んだ口調で言った。
「――しず……コイツこう言うてるけど、お前どうすんねん?」
「あぁ?誰が『コイツ』だよテメーコラ」
二人の間に不穏な空気が立ち込める。
このまま話がこじれたら、つかみ合いの喧嘩に発展しそうな予感がした。
もう……こうなったらヤケだ。
「―――あ、ああ!……む…迎えに来てくれたんだ?ありがと!」
私はことさら陽気な声でそう叫ぶと、金髪男の腕に自分の腕を絡めた。
「―――は?」
ヤマトが片方の眉を上げて怪訝そうに私を見る。
「そ…そういう訳だから、この人と帰るね!」
私は無理矢理おおげさな笑顔を作って、男に必要以上にベタベタとくっついて見せた。