SEXの条件・学級委員長 川崎静奈 最終話-2
「べ…べ…別に……」
視線を合わせずに脇をすりぬけようとしたところを、左手で素早く遮られた。
「……ちょー待てって!」
ヤマトの二の腕に胸がポヨンと当たり、私は思わずハッと身を縮める。
「……私…い…急ぐから……」
チラッと見上げた途端、真っ直ぐな力強い視線とバッチリ目が合ってしまい、私は再びおどおどとうつむいた。
至近距離で見るヤマトはやっぱり眩しすぎる。
そんな視線で瞳を覗かれたら、「好きでたまらない」という本心をあっさり見抜かれてしまいそうな気がした。
「―――もう暗いし、駅まで送ったるから待っとけ」
わざとぶっきらぼうな言い方をしてるけど、以前と違って私をちゃんと女の子として扱ってくれている。
嬉しいことのはずなのに、何だか大事なボタンを掛け違えてしまったような居心地の悪さがあった。
「なっ……何よ……どういう風のふきまわし?何か……へ…変な下心でもあんじゃない?」
「以前と同じように」――そう意識しながら、私は精一杯の悪態をついた。
だけどやっぱりヤマトの顔を正面から見ることは出来ない。
「――あほ。心配やからに決まってるやろ」
ヤマトは呆れ顔で鞄をひょいと肩にかけると、大きな手の平で私のおでこをペチッと叩いた。
「ほな、行くで」
違うじゃんヤマト……。
そこは『お前のことなんか女と思てへん』―――って言うとこじゃないの?
以前はそんなふうに言われるのがつらかったのに、今は逆に優しくされると切なくなる。
女の子として見られているのに、恋愛対象じゃない。
前よりもずっと、ヤマトが遠くに行ってしまったような気がした。