SEXの条件・学級委員長 川崎静奈 最終話-10
「……あんたたちっ!……今警察呼ぶからっ!……」
そう叫びながらカバンの中から携帯電話を取りだすと、男たちは二人とも急に慌てたようにヤマトから離れ、車に飛び乗った。
タイヤをスリップさせながら、すごいスピードで駐車場を出て行く黒いワゴン車。
そのいまいましいテールランプが見えなくなると、あたりは急にシンと静まり返った。
「―――ヤマト」
私は仰向けに倒れているヤマトに夢中で走り寄った。
口の中が切れて、唇の端から鮮血が滲んでいる。
「……なんで……ここに?」
半泣きになりながらハンカチでヤマトの血をぬぐった。
「……なんでって……やっぱ心配なったし……戻って来たんやん」
腹を殴られた痛みのせいか、ヤマトの声はまだ苦しそうだ。
「せやけど……お前今……ほんまに……警察呼ぶ気やったん?」
「え?……うん……」
ヤマトの質問の意図がよくわからない。
「あっほやな……せっかく俺が助けに来てやってんのに。警察なんか呼んだらお前が一番嫌な思いすんねんで」
確かに―――。
今二人から受けた凌辱行為を警察でこと細かに事情聴取されることを思うとゾッとしないではない。
でもヤマトをこれ以上危険な目に合わせたくないということだけで、あの時は頭がいっぱいだったのだ。
「……だってアンタ負けそうだったんだもん」
「――あほ。あれは先に相手に殴らせてたんや。最悪ややこしなった時、その方が絶対ええねん。―――お前ほんまわかってへんわ」
ヤマトはまた呆れ顔でため息をついた。