青かった日々〜兆し〜-5
直人と大の前まで歩いてきた梓が二人に問いかける。
「工藤くんに、佐藤くん。お見舞い?」
梓の言葉に二人は。
「「はああ!?」」
と、答えた。
次の日の放課後、大と直人は非常に目の前の存在に怯えていた。
空いた椅子に座る二人の前には、笑顔を浮かべている女子が二人。梓と夏美である。
しかし夏美の背後からは、明らかに黒々としたオーラが滲み出ていた。
事の発端は十五分ほど前。
夏美が今日は部活が無いので、悟史の見舞いに行きたいと直人に言ったのが始まりである。
直人は昨日、大と共に梓に叱られた後、悟史と話すことも無く帰宅した。
帰りの道中、大の提案で夏美には梓と悟史が一緒のアパートということは黙っておこうということで合意した。
しかし、しかしである。
その約束(もはや条約)は大と直人の間で取り決められたものであり、梓が知る由も無い。
夏美に誘われた直人は、どうやって断ろうかと思案していた時、忘れ物かなんなのか。偶々教室に戻った梓に聞かれてしまった。
そして、それを聞いていた梓は夏美に返してしまったのだ。
「悟史君は大丈夫だよ。明日には来れるみたい」と。
無論、この瞬間に直人が真っ青になったのは言うまでもない。
その後、運悪く学校に残っていた大も夏美に半ば強制的に拉致され、今に至る。
「なんで、遠藤さんが悟史の容態を知ってるの?」
夏美が切った口火は、もはや核心に近い。
「悟史とアンタはどういう関係なの?」という副音声が大と直人には、はっきりと聞こえた。
どうか余計なことを言わないでくれ。それが二人の願いでもあった。
が。
「うん、一緒の所に住んでるから」
遠藤の一言はこの空間を凍結させるには充分だった。