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「幸福の時間」
【コメディ 恋愛小説】

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「幸福の時間」-3

――ポツリ―

んっ!?
ポツ、ポツ…
サァ――

「キャッ!!雨降ってきたぁ」
「マジかよ…なんか今の俺の気分に似てる…」
フッと微笑して言ってみた
「アハハ、なに変なこと言ってんの?そんなことより濡れちゃうから雨宿りしよっ」
首を45度に傾け笑顔で僕に言う早希
ヤベッ、カ、カワイイ!っとなに思ってるんだ俺は!?
冷静になれ冷静に!
「あぁ、そうだな早くどっかに雨宿りしなきゃ…」
クンッ!
僕の手が何かに引っ張られた
「ほらっ清隆くん、早く早く!」
早希が僕の手を握って導いてくれる
「あっ、おい早希!」
早希は僕を引っ張って人混みの中を軽やかに走り抜けてゆく
僕の胸の鼓動は確実に速くなっていく
胸の鼓動が周りの人に聞こえるのではないかと心配するほどに

「はぁはぁ、久しぶりに走ったよぉ」
近くの大きな木にたどり着いた
吐息の漏れる早希も色っぽい
俺もある意味限界だった「雨やまないねぇ」
「うん……」
「清隆くんバスケ続けてる?」
「うん……」
「楽しい?」
「まぁ……」
先ほどの雑念を振り払うため何も考えないようにしていた
返事は全てうわの空だ
「あたしね、来週引っ越すんだ」
「うん……」
「それでね、これが米山の最後の夏祭りなんだ」「うん……」
「だから最後に楽しい思い出を作りたかったの」「うん……」
「それでココに来れば大切な人に会えると思って来てみたの」
「へぇ……」
「そしたら本当に会えちゃった」
「……」
「あたしね、まだ清隆くんの事…好きだよ」
「!!?」
「でも受験が近かったから……ほら、清隆くんあたしに夢中だったじゃない!高校もバスケの強い所じゃなくてあたしの行く所に一緒に行こう、なんて話してたし……」
「……」
「だからあたしは別れる道を選んだの……清隆くん、あんなにバスケを一生懸命にやってたもんね!きっと高校に行ったらすごい選手になると思って……」

違う……

俺の幸せはバスケの強い高校に合格することなんかじゃない……
バスケを続ける事でもない…
早希と一緒にいることが……なによりの幸せだったんだ……
「ねぇ清隆くん、あたし達まだ…」
「早希」
俺は早希の言葉を奪うように言い放った
「俺の幸せが早希の幸せであるように、早希の幸せが俺の幸せでもあるんだよ」
「………」
「早希と別れた後、何も幸せに感じなくなった。世界が白黒写真のように色が消えてしまったんだ」
「……」
早希は黙って聞いてくれている
「でも、また俺の世界に色が戻った」
「……」
「早希…―――――」


雨が強くなった

世界から音を奪う

雨がまた強くなる

しかし

世界から色は奪えなかった

雨の降る夏の夜に

大きな木の下で

あるカップルが

唇を重ね合う

それは

一瞬のようで

永遠だった

幸福の時間


―fin―


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