双子の姉妹。 3-5
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今日はいつもの時間より一時間ほど早く櫛森家に向かった。
しばらくうやむやにしてたけど、そろそろ麻琴と話して解決しよう。
「こんにちはー」
「あら、俊哉くん、こんなに早くどうしたの?」
リビングから出てきたおばさんは、まだ仕事から帰ったばかりなのか部屋着に着替えていなかった。
やはりおしゃれをしているおばさんはかなり若く見える。
まあ実年齢も若いけど。
「ちょっとお話がありまして」
「…そう、じゃあおばさんも帰ったばかりだからちょっと着替えてくるわね」
おばさんはそう言って二階に上がっていった。
その間リビングで待つことにする。
ソファーに座って周囲を見渡すが、姉妹の気配がない。
「お待たせ」
おばさんが戻ってきたので二人のことを聞いてみた。
「麻琴と琴音はいないんですか?」
「琴音は友達と遊びに行ってるわ。今日が定期試験の最終日だったから、息抜きじゃないかしら」
そういえばそうだった。
「麻琴はいるけど、部屋に籠もってるみたいね」
「…そうですか」
「それで、話って?」
「あ…麻琴のことなんです」
それから、あの一件のことをすべておばさんに話した。
「…そうなんだ、それで麻琴は俊哉くんと口を利かなかったのね」
「はい」
「でもびっくりした。早く来て真面目な顔でお話とか言うものだから、バイト辞めちゃうのかと思っちゃった」
おばさんは苦笑いする。
「はは…それで今日、麻琴に謝ろうと思ってるんです」
「そう…でも俊哉くんは若者だし、そういうことは普通よね」
「…麻琴が偶然その場に居合わせちゃって、その女の子も突然そんなことしちゃったもんだから、麻琴、嫌な思いしたと思うんです」
「…そうねぇー、俊哉くんのそういうところを見て恥ずかしかったんだと思うけど、やっぱり麻琴は悔しかったんじゃないかな」
「へ?悔しい?」
どういうことだ?
「そりゃあ、麻琴だって俊哉くんのことが大好きなんだから。独占欲の強い子だしね」
おばさんは笑顔で言うが、たぶん俺と麻琴が友達のような関係だからだろう。
「そうですかね…まあ、とにかくそういうことなら麻琴にその子のことは好きでもなんでもないと弁解して謝ってきます。おばさんには先に話しておこうと思いまして」
「ありがとう。おばさんもフォローしておくから」
「助かります。じゃあ、麻琴に会いに行ってきます。その後普通に勉強始めるかもしれません」
「了解」
おばさんの笑顔に励まされながら、リビングを出て階段を上った。