遠恋ーえんれんー 蓮side1-4
「‥最初から。」
「私が告白した時はなんで付き合ったの‥?」
「美音の‥側にいれると思ったから。」
「ははっ‥」
僕の正直過ぎる答えに茜が小さく笑う。
「謝らないで、なんて言わないから。好きなだけ謝って。」
「茜‥?」
「だから好きになってよ。こんなにいい女いないよ?美音を諦めてからでいいから。」
「‥‥。」
思わず黙る僕に茜がまた小さく笑う。
私、しつこいんだから。
茜がカフェを出る前に僕に耳打ちした言葉。
そう言って彼女は駅の方へ駆けて行った。
こんなに最高な女性が側にいたのに、何故僕は美音を好きになったのだろう。
人間の脳は不思議だ。
「泪‥か。」
美音の彼氏、泪。
話で聞く限り、間違いなく天然だと思う。
あれくらい吹っ飛んでないと美音の相手は難しいからな。
正直な話。
嫉妬で狂いそうだけど、美音にとって泪は心臓に等しいくらい大切な存在なのは認めている。
僕も最初は側にいられるだけで良かった。
側にいることが当たり前になったら、今度は美音に必要とされたかった。
美音の心臓になりたかった。
だけど一人の人間に二つも心臓はいらないから。
美音の中にはすでに違う心臓が動いていて、僕はいらない存在だった。
最後に僕は酸素になりたかった。
僕がいなければ動けない心臓なんか敵じゃない。
そう思いたくて。
だけど駄目だった。
どんなにあがいても美音の中の心臓は止まらなかった。
人間って寂しいな。
そんな哲学的な考えにまでいたってしまう自分が悲しい。
「さて‥明日からまた頑張るかな。」
敵は沖縄にあり。
負けるわけにはいかない。
カフェの扉の前で小さく伸びをして、まだ明るい外へ飛び出した。