遠恋ーえんれんー 蓮side1-2
「そう疑うなよ。ケーキは美味しい?」
そう言って作った笑顔を見せる。
茜は偽物の笑顔を信じて本物の笑顔を返してくる。
「ん。おいしーよ!!」
「そか。良かった。」
「そういえば。この間美音を引っ張って行って何話してたの?」
茜がケーキを頬張りながら聞いてきた。
「んっ‥?」
この間‥?
中庭‥
‥‥あぁ。
告白した時か。
「‥あー‥、あいつのせいでグラフィックデザインの先崎に呼び出しくらったから、ちょっとお灸をすえといた。」
「先崎先生の呼び出しはキツイね!美音はまた蓮に罪をなすりつけたんだねー。入学式の時と今回で前科2犯だ。」
思わずついた僕の嘘に、あははっと可愛く笑う茜。
罪をなすりつけてるのは僕なのに。
本当は、美音を呼び出して中庭で告白したと言ったら茜はどんな顔をするのだろう。
いっそ嫌って欲しい。
嫌って蔑んでくれたらどんなに楽だろう。
けど茜は絶対にそんなことはしない。
自分を責めて責めて責めて。
言わなければ先に進めないのに。
僕も。
茜も。
「‥茜にさ、言わなきゃいけないことがある。」
「‥ん?」
更にケーキを頬張った茜が首をかしげ、僕を見る。
言わなきゃ。
茜。
今までごめん。
あともう少し苦しめてしまうけど、そしたら楽になるから。
「‥ごめん。今言ったの、嘘‥なんだ。」
「‥‥。」
「この間美音を呼び出した理由。本当はさ、」
「‥言わないで。」
小さく強く、言葉を遮られる。
茜の声の低さにびっくりする。