胎児の遺言-7
∞∞∞
「やっぱホントに出来てたんだ…」
『うん』
「どうすんの?子供…」
『堕ろすしかないよ』
「…だよね」
『うん』
花梨が気を回して、電話で貴幸を呼び出してくれた。
貴幸は最初警戒して、出てこようとしなかったけど、花梨の気迫に負けたのか、1時間後、私の前に姿を現わした。
∞∞∞
「話って何?」
何度か2人で来たことがある、海の見える公園。
辺りはすっかり日が暮れていた。
海からの風が心地よく、昼間のうだるような暑さが幻みたいに感じた。
手摺りにもたれ、目の前の海を眺めながら、貴幸はたばこに火をつけた。
今から重大な告白をするっていうのに、恋人同士みたいなシチュエーションに、ドキドキしている自分がいた。
まったく、自分のバカさ加減に泣きたくなる。
『あ…うん。子供出来た…』
「どおすんの?」
即座に貴幸が聞いてきた。
『堕ろすよ…』
「何で?」
『何でって…産める訳ないじゃん!』
あっ…でも、ドラマなんかであるみたいに、真っ先に「堕ろせ!」って言われなかった。
最悪の瞬間を、一応覚悟してたんだけど。