イケナイ関係!!-6
「なんてな。本気にした?」
「何言ってんだよ、由梨絵さん。あんまガキをからかわないでくれ!」
ニシシと笑う彼女にまたからかわれたと理解した翔太は、こっそりと一番風呂へと向かった。
――
ステンレス製の浴槽は不気味。四方が鏡のようになっており、入ろうとすると浴槽の下から自分が覗き込んでくるような錯覚がある。
あわせ鏡は異界への扉。
午後四時四十四分に鏡に触れると死後の世界に迷い込む。
いくら作り話といえど、いざその状況になると嫌でも脳裏に浮かび上がる怪奇な想像。
怪談の類が苦手な翔太は祖父母の家に来るたびに風呂を拒んだものだ。
丹念に身体を洗うこと十五分。すでに身体も冷えてきているが、それでも湯船に浸かるのが怖かった。
「おちつけ、落ち着くんだ。そんなことあるわけない。ないんだ」
「何がないんじゃ?」
――!?
急な声に飛び上がらんばかりに背筋を伸ばす翔太。それが由梨絵の声だと理解するのに三秒はかかる。
「あ、いや、独り言です!」
上ずった声を返す翔太は、自分がしっかり怯えていることを悟り、「はぁ」とため息をつく。
これから毎晩、浴槽に怯えるのかと思うと、一週間ぐらい風呂に入りたくなる。もちろん、それが理由で死ぬことは無いが、都会暮らしの翔太にはそれが我慢そうにない。
「よし、入る。入るぞ。入れ!」
自分を奮い立たせようと声を荒げる翔太。
しかし、水面で揺らぐ自分を見ているとそれもできそうに無い。
「んじゃ、お言葉に甘えて……」
代わりに入ってきたのは……。
――
「な、由梨絵さん!」
タオルで胸元を隠す彼女だが、すらりとした脚と柔らかそうな太もも、丸っこいお尻は隠せず、柔らかそうな白が見え隠れする。
「何?」
「何って、俺、は、入ってるのに、出てってよ」
洗面器で股間を隠し、きょろきょろしながらもたまに彼女を見る翔太。
「出てけってお前、入れって言ったのショウじゃろ?」
「言ってないよ」
「だってさっき」
「それは由梨絵さんに言ったんじゃなくて」
「誰に言ったん?」
「いや、それは、だから」
お風呂に入るのが怖いので、自分を奮い立たせるため。
などといえず、どもる翔太。