イケナイ関係!!-5
「はいはい、今ストーブつけるよ。っていうか、由梨絵さんのほうが近いでしょ」
「おお、そうじゃった。悪い悪い」
由梨絵は石油ストーブとコタツをつけると、「さぶさぶ」といいながら丸くなり始める。
「俺だって寒いのに……」
ぶつくさとつぶやきながらも、これ以上邪魔をされても困るとさっさと台所に向かう翔太。
何はともあれ、夕飯を作らなければ空腹は癒せない。そして、この厄介な同居人も煩いままだろうから。
――
ご飯と味噌汁は家庭科の時間に習った程度。おかずは目玉焼きと冷凍食品をひとつ二つ。
それなりに見られる献立になったところで運ぶと、由梨絵は三毛猫のベーとじゃれていた。
「お、こいつ、やるな、猫のくせに、たまにはワンと鳴け!」
「由梨絵さん、無茶言うなよ。ほら、ベーもご飯あるよ」
ベーには缶詰を開け、由梨絵にも餌を与える翔太。
二人顔を見合わせていただきます。
ひとまずはしのげたものの、これからしばらくの間どうしたものか。
財布の中には心配性な母が持たせてくれた一万円札が二枚。金銭的には余裕がある
けれど、地理的には難がある。なにせ、四方に買い物ができる場所がないのだから。
「ご馳走さまぁ」
「どういたしまして」
片付けるものきっと自分の仕事。どうせ由梨絵はお姫様でしかないのだし。
「あんなあ」
翔太が立ち上がると、由梨絵は頬杖をつきながらじっと睨むような視線を向けてくる。
「何? 由梨絵さん」
「どうして由梨絵さんっていうの? 昔みたいにユリでええやん」
「いや、だって、俺らも……」
「昔はさ、ショウもウチのことお嫁さんにしてやるーって言ってくれたやん。なんかさびしいわぁ」
幼い頃は確かにそんなことも言った。
ただ、そのあとでしっかりと由梨絵に「お婿さんにしてもらうの間違いじゃろ」と小突かれたのだが。
「あーあ、ウチ、ショウのためにせっかく綺麗になってまっとったのに」
「え?」
胸にどきりと来る言葉。
年に二度、それも盆と正月だけにしか会えない二人は、別れのときにわんわん泣き喚き、お互い離れたくないと言い合う仲だ。
けれど、それはせっかくできた友達が居なくなるからという喪失感からのこと。
特に恋愛感情は無いはず……。
いや、何か隠している気持ちがある。
後ろめたい、気持ちを……。