イケナイ関係!!-4
「じゃあ、おじいちゃんは?」
「んーと、今旅行中」
「それって、俺どこに泊まればいいのさ」
「まあ、爺さんとこじゃろ?」
「だって、鍵は?」
「ウチがあずかっとった」
由梨絵はポケットの中から鍵を取り出し、翔太に放る。
「なんで?」
「猫のえさをやれって頼まれててな」
「俺は猫以下かよ……」
その猫のおかげで助かったわけだが……。
――
バスに乗って二十五分。
臨時のバスはワゴン車よりやや大きい程度で、外には風澄自動車学校とあった。
山あり、谷ありの道に揺られ、景色はさらに山間色を強めていく。
「しっかし、ショウも大きくなったなあ」
「そりゃ、まあ」
なぜか隣には由梨絵が居り、さらにどこに隠していたのか紙袋をいくつか。
「つか、由梨絵さん、いったい何を買ってきたの?」
「ん? 正月飾りだな。ママさんに頼まれてな。ショウ迎えに行くついでに買って来てって言われてな」
「ん? 俺が来るの、由梨絵さんは知っていたんですよね? なんでおじいちゃんを止めてくれなかったの?」
「いや、手紙に気づいたんが今日だったんじゃ。つか、おまえんとこの爺さんばあさん、年末は来ないとおもっとったみたいで、しばらくは帰ってこんど?」
「マジかよ」
ということは、来年になるまでは一人で田舎暮らし。
家事掃除、洗濯をしたことがない翔太には考えられない約二週間が始まることに、頭が痛くなる。
「まあええやん、ウチがついとるからさ」
由梨絵は自分に任せておけとばかりに胸をドンと叩くが、幼少の頃に培った記憶を紐解けば不安以外に何もない。
なぜなら、彼女は……、
――
祖父の家は簡単に言えば古いつくり。
白い壁は舗装とはがれているのが交互にあり、日の光に黄ばんだ障子が哀愁を語る。
正月前の大掃除に来ることが多かった翔太は、子供の頃、お手伝いと称してびりびりと破いていたのを思い出す。
居間にはコタツがあり、団欒の広場をなす。
低い天井と電灯。
部屋の隅々までいきわたらない明かり。
祖母の昔話を聞き、そのまま眠っていたいたのが昔の翔太……。
「おなかすいた! 寒い! ショウ、何とかしろ!」
感慨に耽る翔太を現実に戻すのは由梨絵の我侭。
桂木家の長女にして末娘の彼女は両親祖父母、長男次男からちやほやされることに馴れており、自分から何かをするということがほとんどなかった。
盆と正月のおり、翔太が戻るたびに彼女は彼を遊び相手にし、日が暮れるまで、泥だらけになるまで付き合わされた。
だが、怒られるのは常に翔太だけ。本家、分家のそれではなく、男と女という性別差のせいか、ほとんどが翔太の無茶に由梨絵が巻き込まれたと勘違いしてくれた結果だ。