イケナイ関係!!-2
――うーさぶう。
山間地の冬をなめていた翔太はジャンパーのフードをきつく被り、ぶるぶると身を震わせる。
缶コーヒーでも買おうかと思うが、見たこともない銘柄に躊躇してしまう。それならコンビニエンスストアでもとあたりを見るが、それらしき建物もない。
我慢して待合室に戻ろうにも、すでにおしくら饅頭状態。
「あー、翔太じゃん。もうきたんかー?」
「え?」
不意の声に驚いて振り返る翔太。風澄村に知り合いは居ない。
けれど、手を振っている女の子はにこやかに彼の方へと走ってくる。
「なぁんもー、それなら電話してくれたらええのに」
親しげに話しかけてくれる彼女は暖かそうなピンクのダウンジャンパーとジーパン姿。フードのせいで顔がよく見えないが、やはり記憶にない。
「えと、どちら様で?」
「な、ちょ、冗談きついでほんにー」
その子は笑いながら勝田の肩をバシバシと叩くが、そのショックでも思い出すことができない。
「まさか、マジで忘れたん? ひどー、うち、マジで傷つくわぁ」
およよと泣き真似をする彼女はどこかわざとらしくあるが、その様子にはひっかかるものがある。
……昔、野山を駆け回った日々が脳裏によぎる。
ドロだらけになった二人。
片方は泣いており、片方は怒られている。
けれど、別れ際に見せた赤い舌。
彼女は確か……、
「お前、じゃなかった、由梨絵さんですか?」
「そうじゃ、ぼけ!」
責める口調はどこか嬉しそう。それを悟られまいとするせいで、由梨絵の顔は面白い形にゆがむ。
「へぇ……、変わったなあ、由梨絵さん」
桂木由梨絵は祖父の兄の孫。すでに他人といえる血筋なのだが、田舎の性格上、いまだに本家、分家という風習があった。
桂木家は楠木家にとって本家であり、頭の上がらない存在。
当然、翔太も由梨絵には……。
「なんじゃ、ほんとむかつくわぁ、昔はえっらいかわいかったのに、今はむかつくガキかい!」
そして一発小突く。
「いってーな。この暴力女」
「天罰じゃ」
とはいえ、気づかないのは翔太のデリカシーのなさ。仕方なしと気持ちを飲み込む。