逃げ出しタイッ!?-56
「ああ」
「だっさ」
「好きな人と、したいんだ」
雅美を見つめる瞳に曇りはない。そして、その言葉を送られた雅美は一瞬嬉しそうに顔をゆがめ、そしてまた怪しげな微笑に戻る。
「私はできなかった」
「守ってやれなくて、ごめん」
全ての悪夢は密室で行われ、それは彼女の知られたくないという檻の中に忌避されていたこと。
「ね、好きな人としたいってことはさ、私としたいってこと? 隆一君は私が好きで、好きな人と初エッチしたくって、それなら、やっぱ私じゃん」
「そうだけど、そんな投げやりにいうなよ、俺は本気で雅美ちゃんを……」
「ね、してあげようか?」
言葉は聞き流すべき、遮るべき。聞いてはいけない。今からすることの枷になるから。
「雅美?」
十分なサイズになったそれをズボンの上からこすりだす雅美。最初はその形を確かめ、徐々に力強く握り、たまにゆるく、亀頭の辺りをさするように……。
「条件ね、三分、私の責め苦に耐えられたら、ご褒美あげる」
「や、ちょっと、こんなところで、んぅ、く」
普段部活動で消費しているはずの精だが、間近に感じる女子の、好きな子の香りに誑かされ、自慰の快感を思い出させてくる。
「あ、なんか湿ってきた。すごい。小さいくせに我慢汁たくさん出るんだ」
「雅美ちゃん」
「これね、なんかねっとりしててさ、舐めてて変な気持ちになるんだよ? おしっこでるところだし、なんかしょっぱくてさ、唾と一緒に飲み込むんだけど、口の中に残っちゃうの。だから、終わってもしばらくはエッチな気持ちのままなんだ」
雅美は舌なめずりして唇をなめる。そのちゅるりという音と半開きの口元の淫靡さに誘われ、隆一もぱくぱくと口を開く。
「そんな、こと、あぁ……っ」
「苦しそう。いいじゃない。我慢しなくても。隆一君、カッコいいんだし、エッチさせてくれる子なんていくらでもいるよ? 私なんか忘れてさ、楽しんじゃえばいいじゃない?」
「雅美ちゃん!!」
「ぅう、そんな、声を荒げちゃ怖いよ」
「……ごめん。けど、雅美ちゃん、間違ってる。絶対」
肩を掴む手に力がこもる。けれど、拒みも、応じることもできず、彼女にされるがまま。
「そうだよ。けど、これでいいの。だって、もう、終わりなんだし」
「終わり? 始まってもいないのに? どうして、君だけの、気持ちで、俺たち二人のこと、なの、にぃ……あっ」
指が雅美の肩に食い込み、震え、しばらくしてすがりつく。
「あ、びくんってなった。うわ、ぴくぴくしてる。あいつらと一緒だ。おちんちんしごいてたら、イクんだ。精子、苦いやつ、どろどろしたやつだして、勝手に気持ちよくなるんだ。こんなところで射精して、我慢できないんだね? 隆一君も獣たちと一緒だ。最低だ。女ならだれでもいいんだ!」
男の生理現象を思う様論い、嫌な女を演じる。