逃げ出しタイッ!?-38
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レイプされて快感を得られるはずがない。
それなら、この小刻みに震える肩は? 痙攣の度にあまい疼きが起こり、奥がじゅんとする。
――私、淫乱なの?
腕で蛍光灯の光を遮り、涙をぬぐう。ついでに鼻水と、ねばっこい唾液も。
「うわ、すげ、溢れてくるわ」
股間に力を入れるとじゅぷっと音がした。男の精がこぼれているのだろう。生ぬるいものが酷く不愉快な気持ちをくれるが、起き上がるのもけだるく、気持ちも起こらない。
「いやあ、すごかったわ。フェラなんかよりもずっといいわ。雅美ちゃんのマンコ」
「先輩の濃いっすね。さすが一週間我慢しただけありますね」
――こんなことのために一週間も我慢してたの? あほらし。
ネタを見せられたらいつでも股を開くしかない自分。なのに時間にして五分弱の行為のためにそれほどの間我慢していた昇がひどく哀れに見えた。
「どうっすかな。俺もしたいけど、なんか先輩のでぐちょぐちょだし……」
「はは、ゴムすればよかったな」
避妊のためではなく、互いの都合でしかコンドームを見ていない彼らには、おそらくどんな理屈をこねたところで意味もない。雅美のなかでは拒む気持ちが急速に失せていた。
「……ねえ、おねえちゃん。どうかしたの?」
「!?」
まどろみから引きずりだされた感覚。まだぼうっとしていたい頭は酷く痛みつつ、壁越しに話しかけてくる妹の言葉をしっかりと聞き取っている。
「大丈夫。ただちょっと、試合のビデオ見せてもらってて、ちょっと興奮して」
はだけた衣服を着なおし、壁に向かって話しかける雅美。
「そう? なんか苦しそうだったけど」
「うん、ほら、もうちょっとで入賞できたっぽいのにさ、すんでのところでこけたみたいでね、感情移入したっぽい」
「ふーん、わかった」
「あっ……!」
「どうしたの?」
「んーん、なんでも、あ、ないの……、だい、じょ、ぶ」
ショーツもつけずに彼らにお尻を向けていたら?
まだ射精していない悟は昇の精子がこぼれる彼女の膣口を中指でほじくり、それを促す。
「やっぱり変だよ。まだ風邪なおってないんじゃない? 今薬もってくから……」
そしてパタパタと走る音。
――いや、来ないでよ。こんなところ見られたら!
智美はなんと言うのだろうか? まだ男子と言葉を交わすこともできない奥手な妹では、きっと唖然として立ちすくむだろう。それではこの二匹の獣の餌食になるだけ。
それだけはなんとしても避けたいと、ドアに走る雅美。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
ドアが開く、その瞬間に……、
「だ、大丈夫。それよりあんた、ちゃんと勉強してないとだめだかんね!」
なんとか間に合った雅美は開いたドアの二十センチ程度の隙間から顔を出し、愛想笑いをする。