逃げ出しタイッ!?-30
「……は、はい」
反抗しても助けはない。なら、少々苦い思いをしてでも妊娠の危険性だけは低くしたいと、大きく口を開き……、
「あ、うぅ、はぁぁあ……」
ひょろりとした体躯がぶるりと震える。そして、男は目の前の女子の頭を押さえつけ、腰をかくかくと前後させる。
「う、うぅ、あぁ、んぅ……」
「んんぅっぷ! んぐんごく……、んぐぐ」
白いのどがゴクリと音を立てる理由は当然……、
「はは、だっせキャプテン。もう出したんだ」
「どうだ、マネージャー、キャプテンの精子うまいだろ?」
「悟、無理だろ。飲むのに必至でそれどころじゃないし」
口腔内に広がる青臭さと、べっとりとして飲み込みづらい男の精。スルメのような臭いのする汁に自分の唾液を混ぜてようやく嚥下できるも、喉に絡まり呼吸をするたびに臭いが戻ってくるような気分になる。
「うぅ、けほけほ、んぐ、けほ」
咳き込む雅美の口から出るのは透明な唾液だけ。男のモノから出たものは全て彼女の食道に絡みながら、おそらく。
「すげーな、やっぱ雅美ちゃんは淫乱なんだわ」
「どうします先輩? やりますか?」
にやけた表情の悟は下半身の一部を膨らませた先輩に話を振る。雅美はまだ続くかもしれない陵辱の宴に乾いた口の中の粘っこいものをごくりと飲み込む。
「いや、いいや。なんかザーメンくさいし、萎えるわ」
「それもそっすね。んじゃ俺らいきますけど、マネージャーが汚したんだし、ちゃんと掃除しとけよ?」
二人は雅美の身体を穢さず、代わりに心を抉る言葉を残し、去っていった。
**
行為の後の生臭い匂いが部室に充満する。
冷静になり、口腔内の精の匂いが薄れると、今度はそれが気になりだす。
――もういいや。
雅美はすでに汚れているジャージを雑巾がわりに行為の痕跡を薄める。
達郎は前を隠したあと、その様子をただ眺めていた。
レイプしたものとされたもの。
一応は無理やりな行為であったものの、途中からは彼の意思だった。
ただ、雅美はそれほどの感慨もないらしく、彼のほうをちらりと見たあと、荷物をかばんの中に無理やり押し込み、そのまま部室を後にしようとする。
「マネージャー……」
背中にキャプテンの声がしたので、すこし立ち止まる。
「部活、まじめにやれよ。みんな困ってるぞ……」
抑揚の無い声。人のものというよりも、機械的な、音がそう並んだだけという、酷く感情の無い、そんな声だった。
「……はい」
それは雅美も同じこと。