逃げ出しタイッ!?-26
「まったく、しょうがねえな。じゃあ、やめる代わりにさ、やらせてよ? 生で」
「や、いや。だって、この前だって中で、もうだめよ。妊娠したらどうするのよ」
恐れていた言葉に正面に向き直る雅美。相変わらず生理的に受け付けない顔がそこにあるが、そのにやけた面のわりに、ウソや冗談を言ってるようにも見えない。
「いいじゃん、もう処女じゃないんでしょ? それに悟とやって気持ちよかったんじゃん。雅美ちゃん淫乱っぽいし、大丈夫だって」
根拠のない言葉をささやきながらじわりとにじり寄る昇。逃げ出そうにも両肩を悟に押さえつけられる。
「いや、嫌よ、来ないで! 誰か助けて……」
悲鳴を上げようにも唇が震えてうまく声が出ない。
「誰も来ないよ。それよか、楽しもうぜ」
昇のがさつな手が、濃紺のブレザーにの胸元に忍び込み、ブラウス越しに胸をまさぐる。
「ん、んぅ」
痛みにうめいているのだ。そう自分に言い聞かせるも、昇の手つきは思った以上に柔らかい。
「お、おい。何してるんだ? ちょ、鍵閉めるなよ!」
そんなおり、飛び込んできたのは弱気なキャプテンの声。
「島崎先輩!」
いつもは部室にいる人程度にしか見ていない雅美だが、このときばかりは彼が救世主に見えた。
「先輩助けて、お願い!」
ここぞとばかりに声をあげる雅美に外の達郎も異変に気づいたらしく、激しくドアを叩く。
「おい、どうする?」
「どうせキャプテンだけですよね? それなら……」
逆転されつつある状況に眉をしかめる昇。けれど悟は余裕の表情で昇に耳打ちすると、いったん雅美のことを解放し、扉へと向かう。
「そんなに焦らないでくださいよ。キャプテン、今開けますから」
意外にも、あっさりとドアを開け、達郎を招き入れる悟。
達郎は汚れた衣服と椅子に座ったまま、ないている雅美を前に鼻息を荒げる。
「いったい何をしてたんだ! お前ら、後藤に知られたらただじゃすまないぞ!」
体育会系というよりも最早格闘系といえる後藤の腕っ節は山陽高校のほぼ全員が知っていること。当然、それなりの意味を持つ……はずなのだが、昇も悟もにやにやするだけで、一向に態度を改める様子がない。
「まあま、キャプテンも聞いてくださいよ先輩、マネージャーここで何してたか知ってます?」
「ん? 何って、今はそれどころじゃ……」
「セックスですよ、セックス」
悟は再び施錠すると、達郎にくすんだ黄色のショーツを見せ付ける。
「これ、精子ですよ。つか、臭いません? おとといからロッカーの中にあったんですよ」
「え?」
戸惑う達郎だが、その臭いには多少記憶があるらしく、振り払うようにしたあと、視線を左右にぶれさせる。