逃げ出しタイッ!?-13
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身を覆うものはおそろいの黄色のブラだけ。最初は可愛らしいフリルのようなものが肌を刺してむずがゆかったけれど、日々身に着けているうちに柔らかくなっていく。
もうすぐお小遣いもたまるのだから新しいものを買おう。それとも父親に頼んで買ってもらおうか? 甘えた声を出してお願いすれば、娘に甘い父のことだ、二つ返事で了解するだろう。
だが、今はそれどころではない。
「いや、やめて……、お願い」
威嚇のせいですっかり怯えた様子の雅美だが、今まさに剥ぎ取られようとしている
使い古したブラを必至で守る。
「焦らすなよ、ま、そのほうが燃えるかも?」
身勝手な解釈をする悟は拳を振るう動作を行う。
「いやぁ」
また暴力を振るわれると予想した雅美は、頭を庇うようにして縮こまる。
そして、肩に触れる手。
「ひぃっ!」
反射的に飛びのこうとするも無機質な壁がそれを阻む。
ぶちりと嫌な音。そしてこぼれる乳房。
まだ男を知らないそれは、薄いピンクに近い肌の色。触りすぎると色素が沈着するからとお風呂でも注意して洗っている乳首は、シャワーが当たるたびに少し気持ちが昂ぶる。
「へー、きれいなおっぱいしてんな。なあ、マネージャー、お前って処女?」
「別に、いいでしょ、そんなこと……」
両腕で隠し、できるだけ距離をとろうとする雅美。しかし、この格好では外にも逃げられず、かといって誰かが助けに来てくれる時間でもない。
「ね、やめて。お願い、酷いことしないで……」
男の股間はズボンの上からでもわかるぐらいに隆起しており、その中にはきっと昨日の男と同じようなものがあるのだろう。
「酷いことってどんなこと?」
「だから、変なことすることよ」
「変なこと? 例えば?」
「その、アレだして……、無理やり、触らせたり」
「アレってこれか?」
男はするっとズボンと一緒にトランクスを下ろし、ぶるんと勃起したものを見せる。
「や、いや、お願い、やめて」
黒光りするそれを見て、昨日の悪夢がよみがえる。
あのアンモニアくさくてしょっぱい、青臭さを持ち、ぬるりと喉に絡まる汁を垂れ流すモノ。
自分は苦しく、気持ちが悪いというのに、男は喜び、こぼし、苦い汁を吐き出す。
「なに? マネージャーはチンコを無理やり触らせられたの?」
「……そう、そうよ。だから、お願い、田辺君、やめてよ」
懇願する滑稽な自分。先ほどがらぎょろりと自分を見る男にそんな泣き落としなど無意味とわかっているのに。