やっぱすっきゃねん!VM-20
「だからあッ…それはつい、先の塁も狙えるかなって」
「でも、オレたちにはデータが少なかった。もう少し様子を見るべきだったな」
直也の云い分に、佳代の苛立ちがピークをむかえた。
「こんなダメ出しして何になるのッ?お互いに悪いところを云い合うなんて、返ってチームワークが悪くなるよッ」
「おまえッ!何云い出す…」
食って掛かろうとする直也を、達也の右手が制した。
「佳代。オレはこんな程度で悪くなるなら、そんなチームはいらないよ…」
達也は、ひと呼吸置いて言葉を続けた。
「オレたちゃ、高い目標を掲げて戦っている。1回でも敗ければすべて終わりという状況下でだ。
おまえの云うチームワークとは、オレに云わせりゃ馴れ合いだ。お互いの悪いところは目を瞑り、ただ誉めあう仲良しクラブだ。
そんなチームで全国制覇に挑んでも、叩き潰されるのがオチさ」
冷静な達也の意見に、直也も割って入る。
「オレはダメ出しなんて思っていない。人間だからミスるのは当たり前だ。
けどな、大事なのはミスを認めて分析し、対策を練り、次の試合で同じミスをしない事じゃないのか?」
2人の意見に佳代は打ちのめされた。
「…ごめん。変なこと云って」
自らの甘さが恥ずかしくなった。そんな姿に、直也と達也は優しく笑い掛けた。
「…じゃあ、次いくぞ。次は3回裏、サードのエラーについてだ」
その日。選手だけのミーティングは夕暮れになっても続いていた。
チームが、“真にひとつ”へとなりつつあった。
…「やっぱすっきゃねん!」VM完…