サンタクロース-3
「知ってるよ。クリスマスに欲しいプレゼントくれる、赤い服着たふくよかで優しそうなおじいさんなの。ほんで、白い長い髭と髪で『フォッフォッフォ!メリークリスマース!』って言う」
「あー私の祖父はそんな感じでしたねー…」
祖父!?
そう来る?
「祖父は本当に立派なサンタクロースでした。近所のサンタクロース達からも尊敬されて、自治会長を勤めていまして…」
なぜ祖父の思い出話を?
たぶん自治会長であったことだけは本当なんだな。
「あの、あのあの!思い出を振り返ってるとこ悪いんだけど、どんだけ言われても無理だから、あんたがサンタだなんて信じらんないから」
「むっ、なぜです?」
とりあえず「むっ」って言うな。
口を尖らせるな!頬を膨らませるな!!
「あんたサンタの格好してるだけじゃん。髪は七三だし、細いし、眼鏡かけてるし、髭は無いし。コスプレにしても半端だし。そもそもサンタ自体この世にいないし!」
あたしはビッとおっさんを指差した。
「仕事、見つけた方がいいよ?中学生に言われんのもいやだろうけどさ。フリーターでも何でもいいからさ、このままじゃダメだって。サンタコスして現実逃避したくなんのは分かるけど…でも…乗り越えなきゃいけないんだし…」
おっさんに言ってるつもりだったのに、あたしの心臓は痛んだ。
現実逃避してるのはあたしだ。
乗り越えなきゃいけないってことも知ってるのに。
「…そうですね。そんなあなたに本当のことを教えます」
どんなあなただよ。
今更、本当はサンタクロースじゃないとか言われたって…。
「あ、私がサンタクロースってのは本当ですよ?」
まだ言う!?
「実はこの子、トナカイなんかじゃなくてただの犬なんです」
そっち?
「知ってましたよ」
「…えー、この子、名前はダックスって言うんですよ」
チワワにダックスって名前付けたの!?犬種変わっちゃったよね!何でそれチョイスしたの?
「ダックスの飼い主はね、25歳のそれはそれは綺麗で可憐な女性なんです。ウヘヘ」
おっさんの飼い犬じゃなかったんだ。
てか、犬を撫でる手付きがやらしい。こいつまさかスト
「ストーカーじゃないですからね」
…あ、そう。