隷従一 白日夢 第四章:再びのミドリ編-5
(三)手錠
居間に立ち戻った俺は、のぶことの情事の後に買い求めた手錠を手にした。
使う当てのない物だったが、ミドリに使いたくなったのだ。
恐怖にひきつるミドリを見たくなったのだ。
しかし案に相違して、ミドリは素直に従った。
自ら進んで、両手を差し出すミドリだ。
俺に逆らうことが、危険だと感じたのか。
それとも、ミドリ自身にその気があったのか。
恐る恐る差し出すところをみると、前者のようだ。
俺は、後ろ手に手錠をかけた。
恐怖心に歪むミドリを見ると、急に愛おしさが込み上げてきた。
「ミドリ、ミドリ、・・。」
湯船に浸かっているミドリの傍に、俺も入った。
そして、ミドリの胸に顔を埋めた。
「可哀相に、可哀相に、・・。」
当事者のくせに、俺は猫なで声をかけながら、ミドリの顔にキスの嵐をふらせた。
すがるような表情で、ミドリは応えてきた。
ベットリとまつわりついてるシミーズを、俺は力任せに引きちぎった。
ミドリは、ひと言も発することなくいた。
嵐の吹き去るのを、ひたすら待ちわびているようだった。
湯栓を抜いた俺は、空になるまでミドリの身体中を舐め回し続けた。
ミドリは、ひと言も発することはなかった。
恐怖感が、やはりのことに抜けないのだろう。
俺はミドリを抱き起こすと、丁寧にバスタオルで拭き取った。
そして手錠を外した途端に、ミドリは俺にしがみついてきた。
「怖かった、こわかったあ。」
ミドリは激しく泣きじゃくりながら、俺にむしゃぶりついてきた。
「済まなかった、済まなかった。」
俺は、何度もミドリに声をかけた。
そして、ミドリを抱きかかえるようにして、ベッドへと誘った。
ミドリは、その間も俺の唇を求め続けてきた。
身体を密着させていれば、あんな非道い仕打ちは受けないだろうと考えていたのかもしれない。
俺も又、ミドリの求めに積極的に応じた。
髪から滴り落ちる湯なのか、それとも涙なのか、ミドリの顔から水気が無くなることはなかった。
ベッドに倒れ込んでからも、ミドリの激しさは治まらなかった。
俺を組み敷いたミドリは、俺の指にその細い指を絡ませてきた。
俺の腕をグッと横に伸ばした後、激しく俺の乳首に吸い付いてきた。
「イタっ!」
吸い付くどころの騒ぎではない。
歯を立ててきた。
意趣返しのつもりなのか、何度もコリコリと噛んでくる。
腕を折り曲げてミドリの頭に手を宛おうと試みた。
しかしミドリの力が意外に強く、ままならぬ状態だった。
「いた・」
ミドリが俺の口を塞いだ。
忙しなく顔を、右・左と斜めに動かしてくる。
舌を絡めようとする俺の意向を無視して、ミドリは動かし続けた。
その間も、ミドリの指が俺の指を弄んでいる。
更には身体を少し浮かせて、ミドリの乳首が俺の胸の上を這いずり回っている。
尋常ではないミドリに、
“やり過ぎたかな。”と思う俺だ。
急に起きあがったミドリは、辺りを見回し始めた。
何かを探している風に見える。
「何だ、どうした?」
訝しがる俺に、妖艶に微笑みかけながら
“ちょっと、待って。”と、目で訴えてきた。
居間に入ったミドリが戻った時には、手に手錠を持っていた。