『Summer Night's Dream』その4-2
「だから、ほら、日向君もせっせと働く」
「はいはい」
半ば座り掛けていた腰を、再び浮かせて陽介は立ち上がった。だが、やる気は一向に湧いてこなかった。
そもそもこの作業、ゴールが見えてこない上に成果が出るかどうかも怪しい。
例え何かしら見つかったとしても判断は全てさくらの頭の中。
陽介の出る幕はない。
それがほんの少しだけ歯痒いような、悔しいような、微妙な気持ちだった。
だから、悪気はなかったんだと思う。
ただ、何となく居づらくなっただけ。
ほんの些細なイタズラだった。
――カシャ。
気が付くと胸ポケットに忍ばせておいたカメラを抜き取って素早くシャッターを切った。
「きゃっ」
残光を浴びたさくらが小さく悲鳴を上げた。
「ちょっと、何するのよ」
「えっと……ああ、この間の仕返し」
咄嗟に思い付いた言い訳を口にした。
自分でも何やってんだと思う。
「ごめん。あまりにも暇だったから」
作り笑いでごまかしつつ、頭を下げる。
「ほんと、ごめん」
「…まあ、いいよ。頼んでるのはこっちだもんね」
呆れた顔を見せながら、さくらは小さくため息をついた。
「でも、写真は消してね。変な顔で写ってると恥ずかしいから」
陽介は確かに、と言ってカメラの背面に写ったさくらの姿を見た。
しかし、それは……
「あれ?」
陽介が声を上げた。
さくらがそれを不思議そうに見た。
「どうしたの?」
「ちょっと、これ見て」
さくらが近付いてきて、隣に腰を下ろす。