The last berry-愁--8
「あ、出来ました。」
泣いてしまった気恥ずかしさもあり、いそいそと片付ける私の手首を愁さんが引いた。
あっと思う間もなく、愁さんが私を抱きしめる。
「愁、さん…?」
「…ごめん、ちょっと…」
小さな声で、つぶやく。
少し震えながら、私を強く抱きしめた。
私は愁さんの肩にゆったりと頭をのせて、たくさんの願いを込めて彼を抱きしめた…。
---その後、愁さんは以前よりもずっと穏やかに笑うようになった。
その表情はなんだかとてもリラックスしていて、彼の傷が一つ癒えたことを物語っていた。
「…僕を人間だと、言っていたね。」
暖かい太陽の光が差し込む部屋で、愁さんは私に語り掛けた。
「はい、もちろんです。」
私は満面の笑みで答える。
「僕にも…愛はあるのかな。」
「そんなの、当たり前じゃないですか!」
私がつい大きな声で言うと、愁さんは笑った。
しかし、すぐにどこか緊張感漂う表情で下を向く。
「僕に、もしも僕の中に、愛が存在するとしたら、きっと…
…僕は君に、愛を持っているのだと思う。」
「…え?」
私は聞き違いかと思い、愁さんの方を向く。
「でも、自信がない。
君に思うのは、優しい感情だけじゃないんだ。
今までみたいに傷つけてしまいそうで…それに、いつか君がどこかへ行ってしまったら、僕は…。」
ぎこちなく言葉を選ぶ愁さんに胸が熱くなり、私は思わず彼に抱き着いた。
「私はどこにも行きません、どこにも行けません…。今までだって、全然傷つけられてなんか…!」
むしろ、私が愁さんを傷つけてしまうばかりだった…。
「奈々…。」
抱きついた私の手に指を絡め、愁さんは強く私を抱きしめた。
「ん…っ。」
軽く触れる唇。
でもそれは、とっても暖かくて、頬をくすぐる優しい指が嬉しい。
「んっ…あ、ふ…」
諭すように唇を開かされ、歯列をなぞられる。
激しいキスに、息も出来ない。