投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

二個目の苺〜アーモンドクッキー〜
【その他 官能小説】

二個目の苺〜アーモンドクッキー〜の最初へ 二個目の苺〜アーモンドクッキー〜 24 二個目の苺〜アーモンドクッキー〜 26 二個目の苺〜アーモンドクッキー〜の最後へ

The last berry-愁--6

***


…これで、この人の気が晴れるなら…いくらでも殴れば良い。


心の中でそう言って、私は目を閉じた。


だけど…私の周りの空気が破られることはなく、私はそっと目を開いた。


「………愁さんっ…!」


眼鏡が石に当たる乾いた音が響いた。


始めに目に入る、赤く染まる、腕。


塞がりかけていた傷が、見る間に血に染まっていく。

「愁、さんっ…ごめんなさい、私…。」

「大丈夫。」

訳も分からずつい謝る私に、愁さんは優しく言った。

「母、さん。」

愁さんは腕を押さえたまま眼鏡を拾い、母親に向き直った。

彼女は愁さんの怪我に動揺したようだったが、ぎこちない愁さんの言葉で、もう一度彼を睨んだ。

「僕はあなたを、殺したい程恨んでる…たぶん、今でも。」

そう言って愁さんは彼女に一歩近づき、彼女は体を強張らせた。

「だけど、僕はもう…
…人を憎んで暮らすことに疲れた。」

愁さんはなぜだか寂しそうに笑って、彼女を真っすぐ見た。


「さようなら。」


愁さんがそう言ったとき…一瞬時が止まったかのように錯覚した。

文字通り固まっている彼の母親を一瞥して、愁さんは私の手をとって歩き出した。


「なんで、」

歩きながら、愁さんが私に言う。

「え?」

「なんで、あんなことした。」

愁さんの声は、怒ってるようだった。

どうしよう…あんな風に出しゃばって、やっぱり迷惑だったよね。

「ご、ごめんなさい。私、余計なことばっかり言って…。」

「そうじゃない、さっき、なんで避けなかったんだ。」

そう言って、愁さんはこちらに向き直る。

私は一瞬何のことか分からず黙ってしまったけど、すぐに先程のことを思い出した。


二個目の苺〜アーモンドクッキー〜の最初へ 二個目の苺〜アーモンドクッキー〜 24 二個目の苺〜アーモンドクッキー〜 26 二個目の苺〜アーモンドクッキー〜の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前