The last berry-愁--4
「あの人が忙しくなければ、私ともう少し一緒にいてくれたら、あんたなんか必要なかったんだから。」
『父さんにはなれない』
私は彼女の鋭い声で、もう一度その言葉を思い出した。
『僕は…父さんにはなれない、から…』
『あの人が忙しくなければ、あんたなんか』
『僕は、父さんじゃない』
『お父さんと同じで優秀だから』
『あんたの顔はもう見たくないんだ』
『お父さんに似て綺麗になったじゃない』
…お父さん。
愁さんの…お父さん。
愁さんを、その人の代わりにしていた…?
何の事情も知らないけれど、それくらいはなんとなく分かった。
「あんたなんか、産まなきゃ良かった!」
彼女の言葉に耳を疑う。
愁さんの方を見ても、彼は慌てる様子もなく、ただ彼女を見ていた。
「あんたって母親すら大切にできない人間なのね!
普通の子供ならお母さんを愛するべきじゃない。そうよ、お父さん以上に愛するべきだわ。なんでそんなこともできないのよ!」
彼女は青筋を立ててまくし立てた。
私はその言葉に怒りで震える。
なんてことを言うの。
こんな状態の愁さんに…自分の子供に向かって。
けれども、私の様子とは裏腹に、愁さんはとても落ち着いている。
「できないよ、僕の中に愛が存在しないから。」
渇いた声で発したその言葉は、なんて哀しいんだろう。
…そんなことない、愁さんの中にある愛を、私は知ってるもの。
私は彼女を睨みつけた。
…もうこれ以上、彼を傷付けさせない…!