白銀のたまご〜パチプロチーコの生活4-5
[ どこで? ]
[ あっちに来てたのよ
…めずらしく ]
[ そうか… ]
今日のシンちゃんはいつもと違う。
何だか悪いところに来てしまったみたいだった。
[ そろそろ帰るわ
また電話する… ]
席を立とうとするとシンちゃんは引き止めるように言葉を継ぎ足した。
[ やめとけ…
今のチーコはその時期じゃない
ウチコなんてなかなか見つかるもんじゃないぜ… ]
[ シンちゃんは?…
もう引退しちゃうの? ]
そう尋ねるとまた新しいタバコに火を灯してシンちゃんは笑った。
[ 引退?…パチプロに引退なんかないぜ ]
[ 私は…引退したいの ]
[ しろよ…もうだいぶ儲けたろ? ]
何も返せなかった。
今は打ってても昔みたいに楽しくない。
毎日神経をすり減らして、ただ勝ちにこだわっているだけ…
なんだかそれが苦痛に感じる事があるのよ。
[ ウチコに打たせる事が引退した事だと思うか? ]
また何も返せない。
[ サワ…何て? ]
[ 別に…なんにも…
サワちゃん…雇えないかな?と思って… ]
[ いくらか回したか? ]
この人には本当に隠し事ができない。
[ しかたなかったのよ
換金所の前で土下座されちゃって… ]
シンちゃんはタバコを持った手首を顔にあてて、下を向いて微かに顔をしかめた。
[ いくら回した? ]
[ 3万どうしてもいるって… ]
内ポケットから財布を引き抜くと一万円札を3枚私に出した。
チラッと見えたけど、ずいぶん厚い財布だった。
ウチコの日給みたいなのが入ってるんだろう。