白銀のたまご〜パチプロチーコの生活4-3
私はスッテンテンに負けてしまって、ここに座っていた。
家賃が払えないで催促が鬱陶しいから、夜遅くなるまで帰れない…
ここにいるとあったかいし、遅くまでタダで居られる。
お金持ってるフリして、ここに座っているのはなんとも惨めな気分だった。
それでもパチンコだけは止められなくて…
今はお金も持ってるし、負けたりしない。
お金がなくて台に座れないのと、お金持ってても座らないのとでは大違いだと思った。
もう、絶対負けたくない。
そう…イタズラに知らない台に座って時間とお金をムダになんかしたくないのよ。
今はどれだけシンちゃんに感謝しているか…
そのシンちゃんも今はホールにいないんだ…
[ あれ?チーコじゃん ]
声をかけて来たのはヨコケンと呼ばれるここの常連だった。
半分だけ色のついたサングラスをかけて、手には缶コーヒーを持っていた。
[ シンちゃん知らない? ]
[ シンちゃん?…
さぁ、今日は見ないけど ]
[ …そう ]
[ あっちは? ]
[ 今日は定休日よ
私も定休日… ]
[ こっちに出勤してんじゃん? ]
[ 打ってないわ
見に来ただけよ ]
ヨコケンはホールの方を遠く見て
[ 何だ?怪しいなぁ
教えろよ、何かあんだろ? ]
[ 何かって何よ? ]
[ マジかよ、何か情報握ってんだろ? ]
[ そんなもんないわよ
あったら打ってるじゃん? ]
[ 怪しいなぁ… ]
ヨコケンはにたりと笑いながらホールへと消えて行った。