やっぱすっきゃねん!VL-4
「な、なによ」
その視線に耐えきれず、思わずたじろぐ。すると直也は、ひとり納得した様子で佳代に云った。
「最初にデートって云っただろ?」
「それが?」
「おかしいと思ったんだよッ。アイツの好みって、かわいい系だからな。それが“よりによってこんなの”なんて…」
「こ、こんなのだと…」
その瞬間、佳代の平手が伸びた。
「おっとッ」
かろうじて避ける直也。
「人のこと云えるほどかッ!アンタの兄貴の方が、よっぽどマシだッ」
「おまえだって、単なる真っ黒けじゃねえかッ!」
校門の前で始まった、いつもの罵り合い。
「人のこと心配するより自分の心配でもしてろッ!有理ちゃんに、なんにも云えないクセにッ」
「…あ、おまえそれを云うのかよ」
「何度でも云ってやるわよッ」
直也の形勢が危うくなりかけた時、後ろからクルマの近づく気配を感じた。
「おまえ逹、なにやってんだ?」
現れたのは永井だった。
「また、こんな処で痴話喧嘩か?」
時折ぶつかり合う2人。だが永井には微笑ましく映る。
しかし、
「監督ッ!オレ、こんな真っ黒けなんか好みじゃありませんッ」
「わたしだってッ、こんな意気地無し好きじゃないですッ」
この時ばかりは、間髪入れずに互いが全否定の言葉を叫ぶ。そんな光景が、余計に永井の気持ちを和ませる。
「とにかく、さっさと帰れよ」
クルマが進み出した。佳代と直也はしばらく頭を下げていたが、
「わたし、帰るから」
「…ああ、またな」
互いに、ぎくしゃくした雰囲気のまま、その場を分かれた。