投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

やっぱすっきゃねん!の最初へ やっぱすっきゃねん! 397 やっぱすっきゃねん! 399 やっぱすっきゃねん!の最後へ

やっぱすっきゃねん!VL-14

「どうだった?」

 信也は俯いた。

「…マウンドの方が楽だな」
「そうかい」
「ああ…」

 互いに目を合わせない。グランドを見つめるだけだった。

「ど…ナオちゃん、どうしたのッ!」

 尚美の異変に、佳代と有理、それに直也までも気づいた。
 目元にハンカチを当てて、泣きながら戻って来たのだ。

「何か、ひどいこと云われたの?」

 佳代と有理の視線が直也に向いた。

「ちょっと待てよッ!オレを睨んだって…」
「…ちがう…ちがうの…」

 そう云ったきり、ひざに倒れ込んで泣き出した。
 最初は嬉しさが。次いで喜びが。そして最後に、心の奥に隠した侘しさが消えていた。
 涙が止まらなかった。諦めていた想いが、再び可能性をもったから。

 佳代逹には、そんな尚美を見守るしかなかった。



 両ベンチから選手がグランドに現れた。直後に、球場全体から拍手が湧き上がった。

「集合ッ!」

 主審の合図に、選手逹が一斉にホームへ向かった。
 光陵高校、入部商業の選手が相対してズラリと並んだ。

「入部商業と光陵高校による決勝戦を行います」

 審判4人が姿勢を正す。

「一同、礼ッ!」

 一礼の後、両校選手が散った。入部はベンチに、光陵はグランドに。

「さあ、いよいよだ…」

 前のめりで見つめる佳代。観覧なら気は楽だろうと思っていたが、逆に緊張が走る。

 光陵のピッチャーは、マウンドを丁寧に調節して練習を繰り返す。
 すでに今日で3連投。大会での5試合すべて、ひとりで投げてきた。

「ラストッ!」

 キャッチャーが中腰で構える。ピッチャーは、セットポジションから素早いモーションで腕を振った。
 キレのよいストレートがミットを鳴らした瞬間、キャッチャーは小さな動きからセカンドへと投げた。
 糸を引くような低いボールが、セカンドの小さなグラブに収まった。



「なにッ!あのクイック」
「凄いな…バッテリー共に半端ない」

 ケタ外れのスピードと俊敏さを面りにして、思わず声をあげた佳代と、それに相づちを打つ直也。

 投球練習が終わり、1番バッターが左打席に入る。入念に軸足を固めると、バットを短く握って小さく構えた。


やっぱすっきゃねん!の最初へ やっぱすっきゃねん! 397 やっぱすっきゃねん! 399 やっぱすっきゃねん!の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前