投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

やっぱすっきゃねん!
【スポーツ その他小説】

やっぱすっきゃねん!の最初へ やっぱすっきゃねん! 395 やっぱすっきゃねん! 397 やっぱすっきゃねん!の最後へ

やっぱすっきゃねん!VL-12

「分かってるからデカい声出すんじゃねえよッ」

 こうして、揃った4人が階段へと進むと、目付け役である永井と葛城が待っていた。

「監督ッ、野球部の方に挨拶に行かせて下さい」

 先頭にいる直也が訊いた。永井はしばらく黙っていたが、

「分かった。試合開始まで幾らもないからな」
「ありがとうございます!」

 一応、釘を刺して向かわせた。

「ところでさ…」

 広い階段を降りながら、佳代は直也に耳打ちする。

「有理ちゃんの向こうの席、中里が座ってるけど、変わってもらったら?」
「…おまえ、いい加減にしろよ」

 直也の頭に、昨日の感情がぶり返す。
 しかし佳代は気づいていない。

「そう。じゃあいいや」
「ちょ、ちょっと待てよ」

 あっさり話を閉じようとするのを、直也は慌てて止めた。

「それ、中里に云ってくれないか?」

 佳代は柔和な顔で笑ってる。

「…分かった。云っとく」

 そして階段を降りて行くと、ひとりの選手が手を振っていた。

「ナオヤァーッ!」

 山崎の声が聞こえて来た。

「山崎さんッ、久しぶりですッ」
「待ってろッ、そっち行くから」

 山崎はそう云うと、となりに座る信也の顔を見た。

「オイッ、青葉の連中、来てるぞ」
「そうだな…」

 なんとも他所々しい口ぶり。山崎はすぐに原因が分かったが、あえて無視した。

「どうかしたのか?」
「いや、何でもない」
「そうか、だったら行こう」

 強引に連れ出す山崎。彼も佳代と同様に、おせっかいな部類だ。

「お、おいッ」
「いいから、いいから」

 長年バッテリーを組む間柄。おそらく、実弟の直也よりも信也の性格を解っている。

 野球以外では臆病なことも。

「久しぶりだな、直也に佳代ッ」
「久しぶりですッ!山崎さんッ」

 声を弾ませた山崎に応えたのは佳代だけ。有理は小さく会釈をしたが、信也も尚美も直也も、何も云わない。

「直也もそうだが、佳代。おまえ、デカくなったなあ」
「もうッ、気にしてんですから云わないで下さいよッ」

 恥ずかしさから、思わず山崎の肩を押した。


やっぱすっきゃねん!の最初へ やっぱすっきゃねん! 395 やっぱすっきゃねん! 397 やっぱすっきゃねん!の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前