続・僕はHな管理人-6
『分かってたのよ…いつかこうなること。彼には帰る場所があったし、私もそれを承知で彼に魅れたんだもの…』
「倫ならぬ恋…だったんだ…」
『そう…5年続いたの…』
「5年は長いね―――」
『うん…』
僕は唯の艶やかな黒髪を指で梳きながら、こう言葉を続けた。
「無理に忘れなくて、いいんじゃないかな?」
『え…?』
「だって…本気で愛し合った結果だろ?」
『…うん…』
唯は、僕が放った言葉を噛み締めるようにして小さく頷いた。
そして、口元を手でおおうと、声を殺し、静かに涙を流しながら、僕の胸でしばらく泣いていた。
僕のシャツの胸元が、唯の涙で濡れ、冷えたところへ、唯の温かな吐息が掛かり、再び僕を温めていく―――
『零…キスしてくれる?』
泣き始めたときと同じように、静かに泣き止んだ唯がそう言った。
「もちろんいいよ…どんなキスがお望み?」
僕はわざと軽い素振りで唯にそう聞いた。
『そうねぇ…零が1番得意なキスをして!』
ふぅ―――
さすがに年上の姉さんは手強い!
でも…
頑張るしかないさっ…
僕!!!
………
僕は唯に瞳を閉じさせると、額…右まぶた…左まぶた…右頬…左頬…飛んで、あご先…と、順番にキスを落としたあと―――
…そっと唇に戻った。
チュッ…
僕の唾液で濡れた唇が、唯から離れるその瞬間…
―――冷たい銀糸がツッ―と引き合い、唯の口元にヒタ…と戻った。