星降る夜にきみを想うこと-1
誘ったら絶対喜んでくれると思った。
*
「どこいくの。こんな時間に」
玄関に向かっていると、母に見つかった。
父はまだ帰っていないようだ。心の中でセーフと叫ぶ。
「雅成くんと星みてくるよ」
それだけ言うと母は察してくれたようだ。
「雅成によろしくね〜」
父にも私の外出を適当に言ってくれるだろう。
私は、愛車に股がりペダルを漕いだ。
夜空には雲もないようで、星が瞬いている。
うん。
よさそうだ。
雅成くんのマンションはうちから自転車で15分。
通いなれた道をうきうきと進んだ。
―あの角を曲がるまでは。
角を左折して大通りに出ると、見慣れた姿を見つけた。
ひょろりとした長身。
俯きかげんに歩く姿。
今日もいつものジーンズを履いている。
会社の帰りだろうか。
嬉しくなって、声をかけようとしたけれど、違和感に気付く。
雅成くんは一人じゃなかった。
同僚だろうか。
左隣には女の人がいた。
綺麗に栗色に染まった髪の毛。毛先はゆるくカールがかかっている。
薄手のベージュのコート(私が欲しかったやつに似てる)を羽織り、高いヒールをコツコツいわせて、雅成くんと並んで歩いている姿はお似合いにみえた。
雅成くんがタクシーを停め、女の人はそれに素早く乗り込むと二人は軽く手をあげて別れを告げる。
排気ガスを振り撒いて、タクシーが走り去り、雅成くんは少しそれを見送って踵を返した。
「あんな感じがお好みですか…」
「ぎゃー!!」
路地死角の壁ぎわで待ち伏せて、雅成くんが歩いてくるタイミングを見計らって声をかけた。
…予想以上の驚き方だ。