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月夜にあなたを想うこと
【片思い 恋愛小説】

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星降る夜にきみを想うこと-6

「うっ…」

「人の娘の顔をみて、うって何だ。うって」

「か…わいっすね…」

そんな言葉が素直に口をついた。こどもってそんなに得意じゃないと思っていたのに。

女の子は不安げな顔をして俺をみている。
人見知りするタイプらしい。


賢治さんが得意気に口の端で笑う。

「ふっ。雅成、好きになるなよ。紗依は父と結婚するもんな」

「法律的に不可能です。しかも重婚ですから」

「法律なんて、俺がかえてやるよ、なー」

最後は紗依ちゃんと可愛らしく首をかしげ、ユニゾンする。
訂正。
可愛いのは紗依ちゃんだけです。

この子も、将来父親のことで悩んだりするのだろうか。
否、並の父親ではない。・・・何せ、賢治さんだ。
嗚呼、親を選べぬ子の哀しさよ。

・・・強く生きろ。
俺は幼子に心の中でエールを送った。




昔を思い出して、無意識に頬が緩んだ。
隣には健やかに育った彼女がいて。

今はまだ、あの頃の延長線上で紗依ちゃんの一番でいれる気がする。
―自惚れてるかもしれないけれど。


だけど、あとどのくらい一緒にいれるのだろうか。


―彼女は降る星に何を願ったのだろう。



再び件の頬に手をやる。
あのことだって。
何だか大人になる儀式のようで。

戸惑ったけど、嬉しかったのも事実だ。

だけど、彼女の感情はきっと親子愛に似たものなのだ。
俺は勝手にそう結論づける。
一番近くにいる異性に対する想いを恋愛と錯覚しているのだ。
やがて彼女も目を覚まし、他の男の許へ去っていくのだろう。

きっとそうだ。

俺は自身に言い聞かせるように思いを重ねた。
他の男の許に―・・・のくだりで、少し涙ぐみそうになる。


隣の姫君はすやすやと眠り続けていて。
このまま二人で月までいってしまいたいな、なんて馬鹿なことを思う。


俺はそっと、彼女の無防備な白い頬に手を伸ばす。



―触れた指先が甘く痺れた気がした。



―完―


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