星降る夜にきみを想うこと-6
「うっ…」
「人の娘の顔をみて、うって何だ。うって」
「か…わいっすね…」
そんな言葉が素直に口をついた。こどもってそんなに得意じゃないと思っていたのに。
女の子は不安げな顔をして俺をみている。
人見知りするタイプらしい。
賢治さんが得意気に口の端で笑う。
「ふっ。雅成、好きになるなよ。紗依は父と結婚するもんな」
「法律的に不可能です。しかも重婚ですから」
「法律なんて、俺がかえてやるよ、なー」
最後は紗依ちゃんと可愛らしく首をかしげ、ユニゾンする。
訂正。
可愛いのは紗依ちゃんだけです。
この子も、将来父親のことで悩んだりするのだろうか。
否、並の父親ではない。・・・何せ、賢治さんだ。
嗚呼、親を選べぬ子の哀しさよ。
・・・強く生きろ。
俺は幼子に心の中でエールを送った。
*
昔を思い出して、無意識に頬が緩んだ。
隣には健やかに育った彼女がいて。
今はまだ、あの頃の延長線上で紗依ちゃんの一番でいれる気がする。
―自惚れてるかもしれないけれど。
だけど、あとどのくらい一緒にいれるのだろうか。
―彼女は降る星に何を願ったのだろう。
再び件の頬に手をやる。
あのことだって。
何だか大人になる儀式のようで。
戸惑ったけど、嬉しかったのも事実だ。
だけど、彼女の感情はきっと親子愛に似たものなのだ。
俺は勝手にそう結論づける。
一番近くにいる異性に対する想いを恋愛と錯覚しているのだ。
やがて彼女も目を覚まし、他の男の許へ去っていくのだろう。
きっとそうだ。
俺は自身に言い聞かせるように思いを重ねた。
他の男の許に―・・・のくだりで、少し涙ぐみそうになる。
隣の姫君はすやすやと眠り続けていて。
このまま二人で月までいってしまいたいな、なんて馬鹿なことを思う。
俺はそっと、彼女の無防備な白い頬に手を伸ばす。
―触れた指先が甘く痺れた気がした。
―完―