星降る夜にきみを想うこと-3
「…クリスマス舐めてんすか。去年もそうやって痛い目みたでしょ」
去年は巷で大流行した、アニメ(魔法使いの女の子が活躍するやつだ)の魔法のステッキを紗依ちゃんは所望した。
何せ、大流行した上にクリスマスまで1週間を切っていた。どの店も売り切れで、賢治さんと二人、おもちゃ屋を梯子しまくった。
賢治さんは途中で脱落し、俺がやっとのことで見つけたのは17件目のことだった。
…この男、去年の惨状を忘れてやがる。
「何か、そういうのって雅成の役目な気がする。おまえリサーチしといて」
色々な罵詈雑言が頭の中をよぎったが、ぐっと堪えた。
この人に頼めば、きっと忘れて去年のような状況に陥るだろう…。
自分と紗依ちゃんのためだ。
俺は下唇を噛み、拳を握り締めた。
*
「紗依ちゃん」
俺が彼女に向かって手招きすると、顔を輝かせて走ってきた。
大変可愛らしい。絶対、賢治さんよりなつかれていると思う。
「なあに?」
「あのね。サンタさんから電話があって、紗依ちゃんの欲しいもの聞いてって言われたんだ」極めて極めて重大かつ慎重な任務遂行のため、俺は常套句を利用することも厭わない。
「うそっ」
紗依ちゃんは、小さな手を口許に当てて、目をまるくした。
「ほんと。何が欲しいか、俺だけに教えて」
彼女は神妙に頷いて、暫し思案した。
「あのね…」
もみじのような手を伸ばして、俺だけにこっそり耳打ちした。