幸せの朝-3
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若かりしあの頃―――辛く悲しい涙をたくさん流した時期があった。
あの時、私を無理矢理犯した義父は、婦女暴行で現行犯逮捕された。
その後の裁判で刑法177条、罪名強姦罪により有罪判決が下り、懲役3年、執行猶予5年の刑が確定した。
身体の方は後遺症を残すことなく回復し、刑期を終えた今現在、義父は精神状態が安定しないこともあり、とある地方の療養施設に入院しているという。
当時、義父への過剰防衛が指摘された真司さんだったが、義父の後遺症が残らなかったことを受け、その後正当防衛が認められ、罪に問われることはなかった。
義弟のゆうは、事件後父方の祖父母の家に引き取られ、中高一貫全寮制の学校を自ら志願し、その後無事に卒業した。
しかし、卒業後は祖父母が待つ家には戻らず、現在20才になっているはずのゆうは、未だに行方知れずのままだという。
1つ屋根の下で、幸せに暮らしていた子供時代。
あの頃のゆうと私は、本当の家族のように仲良しだった。
しかし、ある日突然実の父が義姉を犯すという、悲惨な事件に遭遇し、それ以来何もかもを失ったゆうの苦しみは、計り知れないものがある。
私はあの事件のあと、自分ばかりが辛い思いをしてきたのだと思っていた。
でもあの時は、私を支えてくれる佑介やママがいたし、今は真司さんが居てくれる。
そう考えると、もしかしてあの事件の最大の被害者はゆうなのかもしれない―――
彼が望まない限り、もう私達は以前のように顔を合わせることはないだろう。
それでもただ1人の姉として、ゆうがどこかで元気に暮らしていることを願っている。