お江戸のお色気話、その6-3
「ふうむ、そうじゃのう、
女という生き物は年増になっても、
或る日、遠ざかっていた生の喜びを知り、再び火が点いてしまうと、
燃え上がって、熱く身体を焦がすようになるものじゃよ、
それに女という者は、
武家の奥方でも、げすな女でも、女には変わりはない、
心の持ちようが違うだけで、心の「たが」がはずれれば皆同じものよ、
良く言う言葉に
(女は灰になるまで、欲望の火を燃やす)と言われておるしな、
その相手の女が、お前のようなどうしようもない男でも、
一度体を許してしまうと、また抱かれたくなるのが女子という
摩訶不思議な生き物なのじゃ・・」
老人は金吉の話を聞きながら、昔を思い出したらしく
自らの経験による女についての講釈をした。
その様子を見ていた、男も女もそんな二人を交互に見つめていたが、
誰も二人の中に入って、話を割る者はいない。
金吉も老人も、裏長屋の聴衆もその妖しい流れの中に淀んでいた。
「それで、ご隠居、娘のことですが」
「おう、そうじゃったな、続けてくれ」
「へぇ・・、あたしは履物を脱いで上がり、
奥方に手を引かれて寝屋に入ると、
もう薄い布団が敷いてあるんです。
娘はすでに布団の中に入って、待っていました。
枕元には、白い懐紙が置いてありましたが、
あの時と同じように、ことが終わった後に娘もあそこを拭くのでしょう、
それを思っただけで、もうあたしのあそこは・・
ご想像のとおりです。
娘は、蕎麦殻で出来た枕に頭を乗せていましたが、
恥ずかしいのでしょうか、顔は少し横を向いておりました。
そのとき、あたしは、はっきりと娘の顔を見たのですが、
それが母親に良く似ていて、
綺麗というか、その上に可憐と言ったらいいのか
とにかく美しいんです、本当にあたしはこんな娘を抱いて良いのかと思い、
夢じゃないかとばかりに、頬をつねってみたほどです、
娘は恥ずかしそうに手を胸の前で重ね、
眼を瞑っていました、
その恥じらいの顔を見ただけで、あたしの一物は更に太くなりました、
(あんな娘と、こんなあたしが交わっても良いのかなってね・・)
娘を見たあたしは、奥方の手を振り切るように、
急いで着物と褌を脱ぎ捨てて裸になり、
娘に近づいて、上に被せてある薄い掛け布団を剥がしたんです。
そのとき娘は(はぁぁ・・)と、か細い声を出していました。
娘は素っ裸のまま、マグロのように寝ていましたが、
少し震えているんです、
初めて男と交わる恐怖と、戦っているんでしょうかねえ」
と、金吉が一息入れると、左官屋の為吉が言う。
「するていと・・その娘を食う野獣が、
金さんと言うわけだなぁ」と茶化す。
それを聞いて、金吉が口を尖らせて言い返した。