白銀のたまご〜パチプロチーコの生活3-6
[ 最近ダメねぇ…
なかなかプラスにまで漕ぎ着けないわ
まぁ…いい遊びってとこね ]
パチプロというのは決まってそういうのよ。
本当は必死なのに、自分はぶらぶらと暮らせる身分だなんてね。
[ またまたぁ…
そんな事言っちゃって
マークの台があるんでしょ?
いいじゃん、ちょっと教えてよ
ねっ…チーちゃん ]
誰が教えるもんですか?
最初の頃ならまだしも、シンちゃんだって私にも教えてくれないわ。
いわば企業秘密なのよ。
だって…責任持てないでしょ?
他人の勝ち負けなんて…
[ どれだって、似たり寄ったりよ
勝負は時の運…なんてね ]
いい人だけど、付き合いはない。
知り合いだけど、友達じゃない。
ホールにはそんな間柄がたくさんいる。
常連のほとんどはそんな関係だと言っても過言じゃない。
そして、姿を消した者の事を多くは語らない。
明日は我が身だもんね…
そう考えると、同じホールで出会った男なのにシゲルはかなり別格なんだ…
[ おっ!サワちゃんじゃん ]
そう思えば、めずらしく開店前から眠っていたはずのシゲルが顔を出した。
わざとらしく鼻にテープなんか貼っちゃって…
[ シゲルちゃぁん!元気そうじゃん
あれ?どしたの?
ガキ大将みたいに貼っちゃって ]
[ いやぁ…いろいろとね ]
[ まさか?…
まさか奥さんにブン殴られた?
ドメスティックバイオレンス? ]
[ ブン殴ってやったのよっ! ]
[ マジで?…またなんで? ]
[ いや…いろいろとね ]
シゲルが何か言おうもんなら、もう一発ブン殴ってやるとこだった。
やっぱりダメかなぁ…
シゲルにもう少し優しくしないと。