運命の人-6
あぁ…なんて幸せな瞬間なんだろう…
こんな素敵な場面…
私の18年の人生で初めてだ―――
私達は、お互いの瞳を見つめ合ったまま、どちらからともなく、唇を求め合い深く重ねた。
私を抱く先生の腕の強さや、胸のぬくもり、深い森の香りに、優しい息遣い―――
そんな1つ1つ…自分の中から消したはずの先生の記憶を、今は丁寧に丁寧に思い出しながら、先生の与えてくれる、安心と温もりの中に身を置いている。
“愛してる”…その短い言葉を口にするまで、私達はたくさんの時間を費やし、大切な人達をも傷付け、犠牲にしてしまった。
お互いに必要な人…そう信じて始まった2人の関係だったのに、気が付けばお互いを傷付け合うことでしか確認しあえない…そんな辛く長い恋が続いた。
『由里子…俺達さぁ、たくさん幸せになろう!』
「うん、たくさん幸せになりたいね…」
『みなみや神木に迷惑掛けた分、俺達ちゃんと幸せになって、この先一緒に生きていこう!』
「うん…」
先生は、私が頷くのを見届けると、再び唇を重ねてきた。
愛しい愛しい先生の唇…
先生の冷たい唇の感触を懐かしく思い出し、私の両頬を涙が伝った。
今まで流してきたどの涙よりも、温かくて愛しくて―――幸せな涙…
私は目を閉じたまま、先生の全てを受け入れようと思った。