未少年 2-5
「ねえきよみょ…あのさ、自分の昔、凄い昔の事って覚えてる?」
「…ぼくのむかしのこと……。ない。せんせいがね、ぼくはおもいでがないって」
「思い出が無い…。じゃあ記憶…」
「…そうだ、きおくがないって」
やっぱり…。
…私、なんて人連れて来ちゃったんだよ…。
「……あー…………………あ、そうだ…あと他の荷物は………あ…薬だ…」
「…あぁ、くすりのまないと。せんせいがいってたの」
「あ、そうなの?」
「うん」
「何の薬なの?」
「しらない」
「知らないのかよー…」
「いっこ、ちょうだい」
「…はい………あ、ちょっと、コーヒーで飲んじゃダメだよ。今水出すから…」
どうする?どうする?
やっぱり病院か警察とかに連絡しないと…。
「はい、水。これで飲んで…」
「…ありがとう………んー…」
「ちゃんと飲めた?」
「…うん」
「…ねぇ、きよみょ。あのさ、あなた多分病院から勝手に出て来たんでしょ?先生とかにも言ってないでしょ?多分きよみょのこと探してるだろうから、戻ろう?」
「………や」
「…嫌?」
「……や。あそここわいし、つまんないから。しらないひとばっかり」
「恐い?」
「けんさ」
「検査…」
「…あと…ちゆうしゃ」
「注射…」
「……だから…ぐすっ…や…すっ…やなの…」
「きよみょ…」
23歳刺青入りの男が泣くんじゃねー…。
私だって軽く混乱して泣きたいんだけど…。