……タイッ!? 最終話「告白しタイッ!?」-7
「ナニ? 五Pなの? ちょっと、さすがに、それは、私でも、引くわ……」
身体ごと紀夫から退く紅葉。もともと倫理観の薄い彼女にして気が退ける彼のらんちきぶりにようやく紀夫も頭を抱えてしまう。
「あー! なんで俺ばっかり! ねえ先輩! 俺そんなにいい男ですか? 違いますよね。ただのマネージャーでしょ? 別に、そんな魅力もないし、お金だって力だって、格好だって全然じゃないっすか。どうしてこんな……、幸せなのに不幸なんですか?」
たまっていたものが爆発する紀夫にさすがの紅葉も「どうどう」となだめるのが精一杯。
「まさか先輩まで誘おうとか思ってませんよね? これ聞いていじめてやれとか思ってませんよね?」
「ちょっと落ち着いてよ。もう十分楽しいからこれ以上いじめないよ。それより、どうする気? 君は一人しかいないんだよ? それなのに一度っていうか一日で三人、最大四人も傷つける約束して」
「それはそうですけど、でも、そんな、俺だけが悪いんですか? 悪いけど、でも」
「まあこれは不幸というか幸福なのかわからないけど偶然の産物なんだし、ちゃんとみんなに話して回ったら? ほら、綾さんからでも遅くないし」
階段の下を見ると当たりの無いくじ引き屋を運営する綾が同じバイトの女の子と楽しそうにおしゃべりしているのが見える。
今ならまだ間に合う。
けれど、それは彼女の信頼を裏切ることになる。
もしまた彼女が心を閉ざしたら?
そこが足かせなのだ。
「……まったく。君は本当においしい子だわ」
「なんですか? おいしいって」
「気にしない気にしない。そうね。こうなったら君の友達を呼べば? だって二人きりとは言ってないんでしょ?」
「え? あ、そっか。そういえば待っていてくれとは言われたけど、確かに二人でとは言ってませんでした。さすが先輩! あったまいい!」
悪知恵というよりも低の低い言い訳でも藁になる。性欲と恋心の混じったぬかるみにはまる紀夫はそんなものでも掴んでしまう。
「でも、友達……。今から呼べる人なんて……」
携帯メモリーにはここ最近連絡を取っていない面々の番号がある程度。ついでに言えば相模原ではほとんど里美たちとしか交流がない。
「仕方ないわね。……えっと稔でいい? アイツぐらいなら呼べるから」
「は、はい!」
紀夫はある種感動を覚えた。普段は迷惑を巻き起こすと思っていただけの先輩、橘紅葉がこうも頼りになる人だとは思わなかったから。
「もしもし稔? うん、明日だけどさ……いいじゃん。優ちゃんと一緒に来なよ。少しはみんなとも仲良くしてたほうがいいよ……」
ただなぜ紅葉が稔を呼び捨てにするのか、なぜ番号を知っているのかはこの際後回しにして……。